ロードレース世界選手権 MotoGP(モトGP)
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどMotoGPクラスに関する情報をお届けします。
Rd.10 7月13日 ドイツ
RACE DATA
■大会名称:MotoGP第10戦ドイツGP
■開催日:2008年7月13日(日)決勝結果
■開催地:ドイツ/ザクセンリンク(3.671km)
■観客数:98,130人
■周回数:30周(110.13km)
■コースコンディション:ウエット
■気温:14度 ■路面温度:17度
■PP:C・スト―ナー(ドゥカティ/1分21秒067)
■FL:C・スト―ナー(1分32秒749)
REPORT
ロッシ、2位表彰台でランキング首位に再浮上!
[速報]
フィアット・ヤマハチームのV・ロッシが2位表彰台を獲得してランキングトップに再浮上した。チームメイトのJ・ロレンソは3周目6位走行中に転倒リタイヤ、テック3・ヤマハチームのC・エドワーズは21周目5位走行中に転倒リタイヤ、J・トーズランドは周遅れながら11位で完走した。優勝はドゥカティのC・ストーナーだった。
雨中の決勝30周は、好スタートをきったD・ペドロサ(ホンダ)が序盤をリードする展開。2番手に約7秒のリードで首位を走っていたペドロサは、しかし6周目の第1コーナーで転倒しリタイヤ。これでストーナーがトップに浮上することになる。その頃ロッシは4番手を走っていたが、エドワーズ、A・ドビツィオーゾ(ホンダ)を抜くと9周目に2番手まで浮上し、先を行くストーナーを追う。ロッシは約3秒先のストーナーを追うが、ストーナーは毎周ベストラップを更新する勢いで差を広げにかかる。ロッシも中盤以降は33秒台を維持して追い上げるが、その差の4~5秒は縮まらないままで終盤へ。25周目頃からは周遅れのライダーも絡んで2人のタイムは少し落ちるが、こう着状態はそのまま続き結局3.7秒差でストーナーが逃げ切った。
[レース展開]
フィアット・ヤマハ・チームのロッシは、第10戦ドイツGPのザクセンリンクで2位を獲得。チャンピオン争いのライバル、ペドロサが6周目に転倒リタイアとなったことから、ロッシが再びランキングトップに返り咲いた。チームメイトのロレンソは、モトGPで初めての経験となったフルウエットのレースで3周目に転倒。しかし依然として、フィアット・ヤマハ・チームはチーム・ランキングのトップをキープ、コンストラクターズ・ランキングでもヤマハがリードを保っている。
前回のオランダで11位に終わったロッシ。今回はその雪辱を果たすべく、チームスタッフとともにウイーク初日の金曜日から全力で作業に取り組んだ。午前中に行われたフリープラクティス第1セッションでは、ストーナーから0.299秒差の3位。第2セッションでさらに前進を目指そうというところだったが、マシンセッティングの変更が期待通りの効果をあげず、ラップタイムを更新することができなかった。順位では4位に後退した。
一方のロレンソは、気温30度の晴天を最大限に利用してYZR-M1を順調にセットアップ。総合6位で1日目を終えた。ようやく怪我から復帰し、通常通りのトレーニング・スケジュールを開始したばかりのロレンソ。体調は非常に良く、ラップタイムも着実に更新して自信を取り戻していった。やや気温の低かった第1セッションはリアのグリップ不足を訴えて10位にとどまったが、午後になると気温が30度まで上昇。ロレンソは自らのタイムをコンマ5秒近くも短縮して5番手。総合順位で6位を獲得した。
2日目の土曜日は雨。午前中は、ロッシとそのチームはセッティング作業をほとんど進めることができなかった。しかし午後になると天候が回復。路面温度は14度と金曜日よりも低かったが、マシンとブリヂストンのレースタイヤとのマッチングが良く、コンスタントにペースをキープした。しかし予選タイヤでは十分な速さが得られず、またベストラップを目指して走行中の最終ラップで、ピットに向かうロレンソに阻まれる形となって1分21秒845、7位に留まった。
コンディションの変化が影響し、ロレンソは予定していた改良箇所を試すことができず、決勝用タイヤでの作業が進まなかった。しかし予選タイヤを履くと、その高いグリップ性が功を奏して25周目で1分21秒795を記録、5位に浮上した。これは5月のフランスGP以来、最高のポジションだ。
決勝日はさらにコンディションが悪化。コース上を雨雲が覆い、時折、雨粒が落ちてくる。このコンディションにもファンの足が遠のくことはなく、決勝日は98,130人を集客。3日間のトータルで221,492人が詰めかけ、目の前で展開されるGPライダーの見事な走りを堪能した。
コンディションを的確に判断したロッシは、予選7位の位置から慎重にスタート。一方のペドロサは序盤から賭けに出て激しくプッシュ。5ラップ目までに後続を7.14秒引き離してレースをリードした。ロッシは1周目、ヤマハのトーズランドに先行を許したが、ヘイデンをパスして再び7位。2周目にはトーズランドを抜き返し、さらにロレンソをとらえて5位まで浮上した。そして5周目、ランキングトップのペドロサが、1コーナー進入で時速150kmから減速したところでフロントを滑らせて転倒。代わってストーナーが首位に上がることとなった。
ランキングトップに返り咲く可能性が見えてきたロッシは、依然として難しい路面コンディションが続いていたにもかかわらず、追撃の手を緩めようとはしない。そして8周目の最終コーナーで、かつてのチームメイト、エドワーズをパス。さらにドビツィオーゾをとらえてついに2位まで浮上した。この時点でトップのストーナーとの差は約3秒。懸命に追って行くが、ふたりのラップタイムはほぼ同等で、その差はなかなか縮まらなかった。レース中盤にはバーミューレンがロッシに迫る場面もあったが、ウエット・コンディションでのYZR-M1&ブリヂストンは絶好調。さらにペースを上げてその差を14秒に拡大。トップのストーナーからは3.708秒差の2位でゴールした。
その他のヤマハ勢では、3人のうちふたりが転倒と、あまり良いところがなかった。ひとりはロッシのチームメイトのロレンソ。ウエット・コンディションでのグリップ性に問題を抱え、6位走行中の3周目、第4コーナー立ち上がりでリアがスピンして転倒した。幸いけがはなく、数日後には初めての訪問となるラグナセカへと向かう。
リタイヤに終わったもうひとりが、今季5度目のフロントロウを獲得していたエドワーズ。残り10ラップというところまでミシュラン勢トップの5位をキープしていたが、第7コーナーで転倒した。エドワーズも幸いにも怪我を免れ、次回のホームGPに臨む。
エドワーズのチームメイト、トーズランドは、フリープラクティスでセッティングの問題を克服、着実にラップタイムを更新して予選11位まで上がっていた。そして迎えた決勝では好スタートを切り、1コーナーで5位まで浮上。ところが路面コンディションが変化するにつれて徐々に後退、最終的には11位でチェッカーを受けた。結果は残念なものだったが、トーズランドは今回も多くのことを学んだ。元スーパーバイク・チャンピオンの彼にとって、インディアナポリス以外では、初めて走るサーキットはこのザクセンリンクが最後となる。
ロッシはこれでランキングトップに再浮上。2位のペドロサに16ポイント、3位のストーナーに20ポイントの差をつけている。ロレンソは今回ノーポイントに終わったが、依然ランキング4位をキープ。エドワーズとトーズランドもそれぞれ5位と9位をキープしている。モトGPはこのあと、大西洋を横断してアメリカ大陸へ移動。1週間後にラグナセカで第11戦を迎える。
RESULT
順位 | ライダー | チーム | マシン | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | C・ストーナー | Ducati Marlboro Team | Ducati | 47'30.057 |
2 | V・ロッシ | Fiat Yamaha Team | Yamaha | 3.708 |
3 | C・バーミューレン | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | 14.002 |
4 | A・デ・アンジェリス | San Carlo Honda Gresini | Honda | 14.124 |
5 | A・ドビツィオーゾ | JiR Team Scot MotoGP | Honda | 42.022 |
6 | S・ギュントーリ | Alice Team | Ducati | 46.648 |
7 | L・カピロッシ | Rizla Suzuki MotoGP | Suzuki | +1'04.483 |
8 | R・ド・ピュニエ | LCR Honda MotoGP | Honda | +1'04.588 |
9 | 中野真矢 | San Carlo Honda Gresini | Honda | +1'16.773 |
10 | A・ウエスト | Kawasaki Racing Team | Kawasaki | +1'29.275 |
11 | J・トーズランド | Tech3 Yamaha Team | Yamaha | +1Lap |
12 | T・エリアス | Alice Team | Ducati | +1Lap |
13 | N・ヘイデン | Repsol Honda Team | Honda | +2Laps |
LAP CHART
RIDERS RANKING
順位 | ライダー | マシン | ポイント |
---|---|---|---|
1 | V・ロッシ | Yamaha | 187 |
2 | D・ペドロサ | Honda | 171 |
3 | C・ストーナー | Ducati | 167 |
4 | J・ロレンソ | Yamaha | 114 |
5 | C・エドワーズ | Yamaha | 98 |
6 | A・ドビツィオーゾ | Honda | 90 |
9 | J・トーズランド | Yamaha | 65 |
CONSTRUCTORS RANKING
順位 | コンストラクター | ポイント |
---|---|---|
1 | Yamaha | 216 |
2 | Honda | 184 |
3 | Ducati | 172 |
4 | Suzuki | 96 |
5 | Kawasaki | 47 |
COMMENT
V・ロッシ選手談(2位)
「雨のなかでのレースはあまり楽しくはなかったけれど、結果にはとても満足している。チャンピオンシップのために、今日のこの成績が非常に重要。先週のアッセンでは僕がミスをしたが、今日はペドロサが同じことをしてしまった。不運なことだがこれがレースというもの。僕らはこれでランキングトップに返り咲くことが出来たのでいい気分だ。ペドロサはタフなので、必ずまたトップ争いに戻ってくるだろう。
でもそれよりも、今最も気にしなければならないのはストーナーのほうだ。この数戦、とても速くなってきているから、彼をどうやって捉まえるかが今後の課題だ。今回もまた、プラクティスで適切なセッティングを見つけようとしながら時間を無駄にしてしまった。こんなことを続けていてはいけないんだ。グリッド3列目からのスタートとなってしまったために、その直後の混乱に巻き込まれることになり、さらに遅れてしまった。
ようやく彼の後ろまで上がったとき、マシンは好調で、ブリヂストンのレインタイヤもよくグリップしてくれていた。だから自信をもってプッシュしていったが、すでに差がありすぎて追いつくことはできなかった。だからこれからは、やはりどうしてもフロントロウを獲得しなければならないと思う。最後にチームのみんなとエンジニアに感謝。次のラグナセカでは、またリードを広げていけるように頑張りたい」
D・ブリビオ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「今日のこの結果で、我々はまたランキングトップに立つことが出来た。ペドロサの怪我がひどくないことを願っている。そして次のラグナセカでは、今まで通りに戦って欲しい。今日はウエット・コンディションの中で、マシンのセッティングがとても良かった。完全なウエット・レースは今回が初めてだったので、そこで好レースができたことはチームとして非常に励みになることだ。バレンティーノは最後まで全力でプッシュし続けた。3列目からスタートした今日は、2位が最大限の結果だったと思う」
J・ロレンソ選手談(リタイヤ)
「朝、起きて雨が降っているのを見たときは、チャンスがあると思って気分が良かった。ところがウォームアップでは何か違っている感じがして、グリップが十分ではなかったので少し自信がなくなっていたんだ。決勝ではスタートがうまくいって1周目で2台をパス。しかしそのあと突っ込み過ぎて、また順位を下げてしまった。そこで挽回しようと頑張り過ぎてしまったようだ。3周目の第4コーナー立ち上がりで加速しようとしたらリアが滑って転倒した。
とっても悔しかったが、今回は怪我がなかったのは幸いだった。ただチームには申し訳ないと思っている。あんなに頑張ってくれたのに結果がこれではね...。依然としてマシン・セッティングを煮詰めていく段階でいろいろな問題にぶつかるが、僕自身の体調はレースの度に順調に回復してきている。今は、初めて見る次のラグナセカを楽しみにしている」
D・ロマニョーリ、フィアット・ヤマハ・チーム監督
「リアのグリップが十分に得られなかった。雨のせいで、もともと抱えていた問題がさらに大きくなってしまったようだ。加速時にリアのスピンが激しくて、ホルヘはこれをコントロールすることができなかった。今回はフルウエットでのテストのチャンスがなかったことが影響した。このような状況で完璧にマシンを準備するのは不可能なのだ。来週のラグナセカは、問題をすべて解決するためにも好天に恵まれることを期待している。そしてホルヘの本来の実力を出し切れるところまで、もう一度挽回したいのだ」
C・エドワーズ選手談(リタイヤ)
「非常にタフなレースだった。コンディションが悪かったが、スタートは何とかうまくいった。それでそのまま安定したペースをキープしていこうと考えていた。しかし実際にはそんなに簡単ではなかったんだ。序盤から問題が出て、リアタイヤからのフィーリングが十分に伝わらず厳しい戦いになってしまった。自分にできることはすべてやった。そして今回も僕のために頑張ってくれたチームのために、何とか5位をキープしようと思ったんだ。ところがレースが進むに連れて状況はさらに難しくなり、僕はとうとう、下りの左コーナーでリアを滑らせた。
兆候はまったくなかったし、あの時点ではすでに表彰台からは遠ざかっていたから無理なプッシュなどしていなかったんだ。ただ少なくとも、ミシュラン勢のトップでゴールするためにドビツィオーゾを抑えたかった。ケイシーやバレンティーノにもついて行こうとしてみたが、到底かなわなかった。今日は5位が精一杯だったと思うが、ドライなら表彰台を狙えたはずなので残念な結果だ。
来週はホームGPを迎えるので、今回の転倒で怪我をしなかったことに感謝している。ラグナセカでは母国のファン、テック3・ヤマハのために良い走りをしたい。今日は残念な結果だったが、僕はすぐに立ち直る!」
J・トーズランド選手談(11位)
「モトGPで初めてのウエット・レース。多くを学ぶことができたが、やはりとても難しいものだった。スタートはうまくいって、1コーナーに5位で進入、もう少しで4位にも上がれそうなところだった。もしかしたら上位へいけるのかもしれないと思ったが、すぐ次の瞬間にそうではないことがわかったんだ。オープニングラップですでに何度か危ない場面があり、あっという間にポジションを下げてしまった。しかもその状況に何もなす術がなかったことが悔しかった。ロレンソが目の前で転倒するのを見ていたので、あまり激しくプッシュする気持ちにはなれなかった。つまり、リアグリップに問題を抱えていたのは僕だけではなかったということなんだ。
YZR-M1でのウエット・レースの経験不足もあって、僕にとっては余計に厳しい戦いになってしまったと思う。自分のペースにはまってしまった感じで、それを上げていくことができなかった。すべては自分のせいなので誰を責めることもできない。
でも、そうしたなかでも今回またセッティングの面で大きく前進できたことは収穫だ。フロントロウとの差はわずかコンマ5秒。ウォームアップでは4位につけた。そう考えれば悪いことばかりではなかったんだ。チームが頑張ってくれたおかげで多くの問題を解決することができたので、次のラグナセカでは、自分が信じている本来の力を発揮できるようになりたい。あのコースはよく知っているので、気持ちを切り替えてポジティブな気持ちで臨むよ」
H・ポンシャラル、テック3・ヤマハ・チーム監督談
「期待していた結果は得られなかった。コーリンがフロントロウを獲得して好調だったが、それでもまだウエット・レースにはあまり自信がなかったというのが正直なところだ。コーリンが雨に強いことは知っているし、実際に好調にスタートし、コーリンだけでなくジェームスも上位につけることができた。しかし残念ながら、序盤からすでに、コーリンがそのまま上位をキープして表彰台に上ることが難しいということがわかってしまった。コーリン自身は本当によく頑張ってポジションをキープしようとしていたが、結局は転倒ということになってしまったのだ。
今日のような厳しいコンディションのなかでは起り得ることで、彼を責めることはできない。彼は、表彰台獲得には不十分な状況の中で懸命に攻め続けたということなんだ。怪我がなかったのは幸いだ。ラグナセカは彼にとって、そしてチームとヤマハにとっても非常に重要なレースだからだ。
ジェームスのほうもいくつか問題を抱えていた。初めてのウエット・レースという難しい状況のなかで最後まで走りきり、ポイントを獲ってきてくれたことはありがたかった。おかげでランキングでは、4位のホルヘにもう少しで届くというところまできている。ラグナセカでは雨が降らないことを祈っている。そしてコーリンとジェームスが雨ではなく暑さとの戦いのなかで上位を目指せるようになればいいと思う」
中島雅彦フィアット・ヤマハ・チーム総監督
「ドイツGPが開催されるザクセンリンクサーキットは、旧東ドイツのザクセン州にあり、ドレスデンから南西100kmに位置します。起伏に富んだ丘陵地に作られ高低差が大きく、回り込んだ低速コーナーが連続する前半セクションと、高速コーナーとストレートが組み合わされた後半セクションに別れ、旋回性とハードブレーキングでの安定性が要求されるテクニカルなコースです。
レースウィークはまたしても不安定な天候の変化となり、セットアップも思う様には進まず苦しみましたが、ライバルとの差を詰めるべくギリギリまでマシン調整を続けたチームとスタッフの努力に、気迫の走りで応えてくれたロッシ選手が確実に順位を上げ2位を確保し、チャンピオンシップを再びリードすることが出来ました。初めてのサーキットで苦しい状況が続くトーズランド選手も11位完走、残念ながらロレンソ選手とエドワード選手は滑り易い路面に足をすくわれ転倒リタイヤとなりましたが、次戦へ向けモチベーションは高いようです。
来週は舞台をUSに移し、ラグナセカサーキットでの開催となりますが、過去2年間は辛酸をなめさせられた厳しいサーキットでもあり、リベンジを目指してがんばりたいと思います」