世界耐久選手権
ヤマハの参戦ライダー、マシンなど世界耐久選手権に関する情報をお届けします。
Rd.01 4月15-16日 フランス
RACE DATA
■開催日:2023年4月15-16日
■大会名称:世界耐久選手権 第1戦ル・マン24時間耐久レース
■開催地:フランス/ブガッティ・サーキット(4.185 km)
REPORT
YART、ル・マン24時間耐久レースで2位獲得
Yamalube YART Yamaha EWC Official Teamは、フランスで開かれた2023FIM Endurance World Championshipの開幕戦、第46回ル・マン24時間耐久レースであらゆる困難を克服して表彰台を獲得した。
全長4.185Kmのブガッティ・サーキットで開催された伝統の耐久レースは、77,000を超える観客が見守るなかで多くのクラッシュ、度重なるセーフティ・カーの出現、オイル流出、寒さ、さらには霧とさまざまなドラマが繰り広げられた。
土曜日のウォームアップ・セッションではN・カネパ、K・ハニカ、M・フリッツを擁するYART Yamahaがトップタイムをマークして好調な滑り出し。現地時間午後3時に決勝の火蓋が切られ、第1スティントを担当するドイツ人ライダーのフリッツが、伝統的な方法に従ってマシンに駆け寄りグリッド2番手から飛び出した。オープニングラップで前方2台のクラッシュに巻き込まれそうになるも、これを避けて素早くトップに浮上。そのままペースを上げて一旦はアドバンテージを4秒まで広げたが、セーフティ・カーの出動により引き戻されてしまった。
フリッツはトップをキープしたままピットに戻りハニカへ交代。ピットストップの戦略が重要となるなか、YARTの3人はライバルとの駆け引きを有利に進めて毎回、トップでバトンを受け取っていた。しかし6時間後、7秒のアドバンテージを築いていたカネパがフロントのブレーキ・キャリパーの不具合によりピットイン。チームは素早く問題を解決して約3分で再びコースに送り出したが、この時点でトップから2ラップ遅れの3番手に後退してしまった。
気温が3度まで下がった夜間も力強い走りを続けていたハニカが、重要な8時間目前で2番手に浮上。この段階で獲得可能な10ポイント中9ポイントを手中にしている。暗闇に加えて深い霧が発生したことでコンディションはより一層、厳しくなったが、ハニカはライバルより速いタイムをコンスタントに維持しながら2番手を守っていた。
しかし不運にも、13時間目にはコース上のオイルに乗り、他の数台とともに転倒。幸いライダーに怪我はなかったが、マシンのほうは、グラベルに投げ出されたところに他のマシンが当たりダメージを拡げてしまった。
ゼッケン7のR1がピットに戻されてからわずか9分で、チームは修復を完了。ハニカが素早く飛び乗り、4番手でコースに復帰して反撃を開始した。そして16時間目を前に3番手に上がり、さらに8ポイントを加算してからバトンをカネパへ。
カネパも再び素晴らしい走りを見せ、このスティントのなかでチーム最速ラップとなる1分35秒984を記録。2番手のポジションをより確実にしてフリッツへと交代した。このあとも3人はミスなく走行を続け、遅いライダーやセーフティ・カーを巧みに切り抜けながら終盤の厳しい戦いを乗り切った。
YARTは全825ラップを走破し、最終スティントを担当したカネパがトップから3ラップ遅れの2位でゴール。ル・マンで連続表彰台を達成した。耐久レース特有のポイント加算方法により、YARTは予選で4ポイント、8時間目で9ポイント、16時間目で8ポイント、そして2位獲得による33ポイントも加算して合計54ポイント。これによりYamalube YART Yamaha Teamはランキング2位につけ、トップを9ポイント差で追っている。
3ART Best of Bike YamahaのM・レナウディン、L・カウチ、M・ラグリブもFIM Endurance World Cupで2位、総合9位と健闘。SSTクラスで合計53ポイントを獲得して同カップのランキング2位となっている。
Wojcik Racing Team EWC 77のC・バーグマン、I・ビニャーレス、M・ギネスが12位、Maco Racing TeamのA・ウェスト、E・ボウロム、B・コバックスが32位。KM MotosのL・マヒアス、F・マリノ、B・マッケルスは序盤で好調ペースを見せていたが、521ラップ走行後に転倒リタイア。Moto Ain Yamaha EWC Supported Teamもスタートから5時間経過後にマシントラブルでリタイアとなっている。
次回は6月16日~18日、ベルギーはスパ・フランコルシャンで開催される。
RESULT
TEAM RANKING
COMMENT
Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(2位)
N・カネパ選手談
「表彰台獲得という結果でシーズンをスタートできたことは、とても良かったと思います。もちろん目標は優勝でしたが、レース中に問題に遭遇してチャンスを逃がすことになりました。でも重要なのは、マシンとブリヂストン・タイヤがとても素晴らしかったということです。そのおかげで私たちはコース上で常に最速だったわけですが、トラブルの間にトップから大きく離されてしまいました。でもこれが耐久レースというものなのです。チームはいつものように非常に素晴らしく、何もかもすべてを私たちに与えてくれました。チャンピオンシップにおいてはトップからわずか9ポイント差のランキング2位となっており、良いシーズンのスタートだと言えるでしょう。このあとは次のスパでのレースに気持ちを集中し、もうひとつ上を狙って優勝を目指します」
K・ハニカ選手談
「表彰台でシーズンをスタートできてうれしいです。私たちはいつも勝利を願っていますが、今日のようなレースのなかでは何が起きても不思議はありません。優勝チームは一度もミスをしなかったわけですが、そのようなことは耐久レースにおいてはとても稀で、そんな彼らに打ち勝つのは簡単ではありません。私たちは全員が素晴らしい仕事をしました。ニッコロ(カネパ)は非常に速く、マービン(フリッツ)の走りも見事でした。チームも休むことなく仕事を続けていたので、マシンとブリヂストン・タイヤの仕上がりが素晴らしかったことを誇りに感じてほしいと思っています。私は不運にも、他のマシンから漏れたオイルに乗って転倒してしまいました。あっという間の出来事でしたし、夜間で何も見えなかったので避けることができませんでした。この間に少し遅れてしまいましたが、チームが素早く直してくれました。全体的には、寒さや霧、転倒やセーフティ・カー、コース上のオイル、そして激しい混戦とさまざまな困難があり、これまでに経験したどのレースよりも厳しい戦いでした。だから今日のこの結果をいつも以上に喜んでいいと思うのです」
M・フリッツ選手談
「表彰台獲得を喜んでいます。もちろん勝利を願っていましたが、レースを最後まで走り切ることが最大の目標で、それを達成できたことに満足しています。マシンはとても順調に走ってくれましたし、ブリヂストン・タイヤも素晴らしく、またチームのひとりひとりが最高の仕事をしていました。チームメイトのふたりもとても好調だったなかで、カレル(ハニカ)の転倒は不運でした。いくつかの問題にもぶつかりましたが、私たちは決してあきらめませんでした。これほどまでに多くのドラマにあふれたレースは今までなかったと思います。本当に厳しい戦いでしたが、冬の間に取り組んできたマシンとタイヤの仕事が実を結んだことがわかったので、チームとして今日の結果を誇りにし、自信を持って次のスパに挑みたいと思います。次のレースを待ちきれない気持ちです」
M・カインズ(チーム・マネジャー)談
「ル・マンでの連続表彰台を、とてもうれしく思っています。もちろん、優勝できればもっと良かったのですが、ポイントのために完走することが最大の目標で、それを達成することができたのです。ライダーたちの走りも見事でした。フロント・ブレーキに小さな問題が出たことで数ラップ遅れてしまい、さらに良くないことにはカレル(ハニカ)がオイルに乗って転倒し、グラベルで倒れていたマシンに他のマシンがぶつかるというアクシデントもありました。こうした困難にもチームがしっかり対応したこと、そしてまた、オフシーズンの間にマシンをここまでしっかり準備してくれたことを誇りに思います。今回は私たちの力と、R1とブリヂストン・タイヤの素晴らしさを証明することができました。勝利は逃しましたが、54ポイントを獲得できたことは重要な成果です。次のスパでは、さらに上を目指します」