アジアロードレース選手権
ヤマハの参戦ライダー、マシンなどアジアロードレース選手権に関する情報をお届けします。
Rd.06 12月3日 タイ
RACE DATA
■大会名称:2017アジアロードレース選手権第6戦タイ
■カテゴリ:SS600・AP250
■会場:チャーン・インターナショナル・サーキット(4.554km)
【レース1】
■開催日:2017年12月2日(土)
■コースコンディション:ドライ
SS600クラス
■周回数:18周
■PP: #22 Apiwat Wongthananon(1分38秒770/Yamaha)
■FL: #100 Thitipong Warokorn (1分38秒936/Kawasaki)
AP250クラス
■周回数:10周
■PP: #500 Anupab Sarmoon (1分53秒522/Yamaha)
■FL: #123 Rheza Danica Ahrens (1分54秒006/Honda)
【レース2】
■開催日:2017年12月3日(日)
■コースコンディション:ドライ
SS600クラス
■周回数:18周
■PP: #22 Apiwat Wongthananon(1分38秒770/Yamaha)
■FL: #22 Apiwat Wongthananon (1分39秒142/Yamaha)
AP250クラス
■周回数:10周
■PP: #500 Anupab Sarmoon (1分53秒522/Yamaha)
■FL: #198 Awhin Sanjaya (1分54秒103/Honda)
REPORT
SS600:ワイルドカード参戦の#22 Apiwatが連勝、#76 Itoはリタイアと9位でランキング4位
Race 1
YAMAHA RACING TEAMの#76 Yuki Itoが、チャンピオン獲得に挑んだ。
2014年にARRC・SS600のランキング2位を獲得。1ポイント差での敗北だった。そして「YAMAHA RACING TEAM」のライダーとなり2年。再びそのチャンスが訪れた。ウィーク初日から#76 Itoは、チャンピオン獲得に向けた準備にすべてを注ぎ、地道にセッティングを続けた。予選は新型YZF-R6を投入した「Yamaha Thailand Racing Team」、特に「VR46 Master Camp Team」からCEVに参戦していた#22 Apiwat Wongthananonが強さを見せポールポジション。#76 Itoは7番手・3列目、最上のポジションとは言えないが、チャンピオンを争うライバルより前のポジションから決勝を迎えた。
序盤はトップ5台が抜け出すが、#76 Itoは2番手グループとなりその5台から離されていった。ただチャンピオンを争うライバルが後方にいたため、ポジションを守れば逆転も可能な状況だった。7番手を定位置にした#76 Itoだったが、中盤に入ると徐々にリズムを取り戻し、6番手の#24 Decha Kraisart(Yamaha Thailand Racing Team)とトップ5台を追い上げていった。
しかし、まさかの事態が訪れる。
14周目の最終コーナーでオーバーラン。さらに15周目の1コーナーで転倒。トラブルが原因だった。これでリタイアを余儀なくされた#76 Ito。それでもトップから10ポイント差。まだチャンピオンへの道が完全に閉ざされたわけではない。
一方のトップ集団では、#22 Wongthananonをはじめ、チームメイトの#65 Chalermpol Polamai、#13 Anthony West(Akeno Speed Racing Team)、#100 Thitipong Warokorn(カワサキ)、#25 Azlan Shah Kamaruzaman(カワサキ)の5人による熾烈なバトルが繰り広げられた。
前半は多くの周でトップが入れ替わり、誰もに優勝のチャンスがある状況だったが、終盤に入ると#22 Wongthananonと#13 Westがリード。そして最終ラップは#13 Westが主導権を握りチェッカーへと向っていた。大きくはないが、2人の差から誰もが#13 Westが勝利すると思ったことだろう。しかし最終コーナーだった。#22 Wongthananonがインにスルリとマシンを滑り込ませ#13 Westをかわすと、そのまま綺麗にコーナーを立ち上がりチェッカー。会心の勝利をチームにもたらしたのだ。2位は#13 West、#65 Polamaiは表彰台に一歩及ばず4位となり、3位には#100 Warokornが入った。
また#76 Itoのチームメイトである#64 Keminth Kuboは、予選14番手、4列目から決勝を迎えた。スタートからのジャンプアップはならず、13-14番手で周回を重ね、最後はグリッドから2つ順位をあげて12位でチェッカーとなった。
Race 2
昨日のレース1でリタイア。トップから10ポイント差で最終レースを迎えた#76 Itoは、スタートでポジションを上げ1周目を終え6番手と好位置につけた。しかしながらトップの#22 Wongthananonをはじめとする上位陣についていけず、序盤から厳しい戦いを強いられた。
レース後半、挽回できればチャンピオンの可能性が残っていたがタイムが伸び悩み、さらに上位との差は拡大。最終ラップでは、後方から追い上げて来たライバルにもかわされ9位でフィニッシュ。逆転チャンピオンには届かなかった。
優勝したのは#22 Wongthananon。レース1に続き2連勝を飾った。
#22 Wongthananonは、ホールショットからトップに立つとすぐにハイペースを作り後方との距離拡大。好タイムを連発しながらラップを重ねていき独走態勢を築くと、その後も危なげない走りでポジションを守りチェッカー。ワイルドカード参戦ながら、レギュラーライダーを抑えて連勝し、新型R6のデビューに花を添えた。
ヤマハ勢では#13 Westが2戦連続の2位表彰台、#65 Polamaiが4位、#24 Kraisartが6位。#76 Itoのチームメイトである#64 Kuboは16位とし、シーズン最後のレースを終えた。
AP250:#500 Anupabが両レースを2位とし、ヤマハ最上位のランキング3位を獲得
Race 1
開幕以来、ライバルに優勝を譲ってきたR25ライダーだったが、前回のインドラウンドで反撃に転じ、#99 Galang Hendra Pratama(Yamaha Racing Indonesia)が初優勝。最終戦もまた、R25ライダーがライバルに勝るとも劣らない戦いを見せた。
予選では、Yamaha Thailand Racing Teamのエース、#500 Anupab Sarmoonが地元の意地を見せてポールポジションを獲得。そしてレースでもその#500 Sarmoonが最後までトップ争いを繰り広げた。
#500 Sarmoonは、スタートでホールショットを奪うと、序盤からハイペースをキープ。このペースについてきたのは、#71 Tomoyoshi Koyama(ホンダ)ただ一人。2人で早々に集団を抜け出し、#500 Sarmoonはトップをキープしたまま順調に周回を重ねていった。
ところが、中盤に入ると#123 Rheza Danica Ahrens(ホンダ)がペースアップし、終盤には2人に追いつき三つ巴のバトルとなる。2対1の構図は不利な状況だったが、#500 Sarmoonはその2人を抑えてトップに立つなど果敢な走りを見せた。しかし追い上げてきた#123 Ahrensの勢いは抑えられず2位でチェッカー。シーズン初優勝には一歩届かなかった。
その後方では、#500 Sarmoonのチームメイトである#14 Peerapong Loiboonpengと#39 Peerapong Boonlertが健闘。グループ内でのバトルに競り勝ち、#14 Loiboonpengが6位、#39 Boonlertが7位。また、前回のインドラウンドで初優勝、Supersport 300 World Championchipの最終戦でも優勝した#99 Pratamaは、前日の予選でアクシデントに見舞われ負傷し、欠場となった。
Race 2
レース1の悔しさを晴らすべく、#500 Sarmoonがスタートからハイペースでレースをリードする。しかし、これに食らいついてきたのが#71 Koyamaだった。序盤はレース1とまったく同様の展開となったが、このレース2で2人は、半分をすぎたところで第2グループと6秒差をつけており、優勝争いは#500 Sarmoonと#71 Koyamaに絞られた。
その後は、コーナー毎、周回毎に順位を入れ替えるが、ともに有効打がない状況が続いた。そして勝負は必然的に最終周の最終コーナーとなった。その最終ラップは#71 Koyamaがトップで最終コーナーへ。レース1で勝負できずにチェッカーとなった#500 Sarmoonは、ここにすべてをかけた。そして予想通り#500 Sarmoonがインに飛び込み前に出る。しかし、アウトに膨らんだ#500 Sarmoonはわずかにスローダウンしたことにより、クロスラインで再び並びかけられ、チェッカー直前にリードを許し、リベンジ叶わず連続の2位でシーズンの終了を迎えた。
7- 8 台で形成された第2グループでは、#500 Sarmoonのチームメイトたちが、こちらも目まぐるしく順位を入れ替える展開の中で上位をキープ。トップ争いと同じく、最終コーナーの攻防を制し#14 Loiboonpenが4位、#39 Peerapong Boonlertが5位でチェッカー。また前日、負傷によるドクターストップでの欠場から復帰した#99 Pratamaもこのグループにつけ9位でチェッカーを受けた。
年間のランキングでは#500 SarmoonがR25ライダー最高の3位、#99 Pratamaがこれに続き6位でシーズンを終了した。
UB150:レース1で#60 Trilaksanaが優勝、#13 Azizが年間チャンピオンを獲得!
Race 1
序盤は、エントリーするほとんどのライダーでトップグループを形成しレースを進めるが、マルチクラッシュなど、ふるいにかけられるように脱落者が出ていった。Yamaha Racing Indonesiaの#60 Wahyu Aji Trilaksanaはこのサバイバルレースを生き残り、さらに目まぐるしく順位が入れ替わるトップ集団の中で上位をキープ。ラストラップにトップに立つと、前を狙うライバルを巧みに抑え込んでファーストチェッカーを受け、今季3勝目を獲得した。この他のヤマハライダーでは、#26 Md Haziq Md Fairies(UMA Racing Yamaha Maju Motor)が3位に入った。
Race 2
ランキングトップに立つ#13 Azizと、2連覇を狙う#60 Trilaksanaのヤマハライダーが年間チャンピオンをかけて臨んだ最終レース。2人の差は#13 Azizが24ポイントリードと大きく開いていたが、レース1で優勝した#60 Trilaksanaは最後まで諦めることなく勝利を目指した。レースは#60 Trilaksanaがトップ争いを繰り広げる一方、#13 Azizは無理することなく、集団の最後尾につき周回を重ねた。この結果、#60 Trilaksanaが2位としたが、#13 Azizが8位でチェッカーを受けたため、チャンピオンを獲得した。
SS600 RESULT Race.1
SS600 RESULT Race.2
SS600 RIDERS RANKING
AP250 RESULT Race.1
AP250 RESULT Race.2
AP250 RIDERS RANKING
COMMENT
SS600
YAMAHA RACING TEAM
#76 Yuki Ito(DNF/9位)
「レース1はトラブルで転倒。大きな、大きな転倒になってしまいました。でもランキングトップとは10ポイント差で、ここまで積み上げてきたものもあるわけだし、レース自体も後半はトップグループを追い上げ、その背中が見えるところまでいけていましたから、まったく諦める気はありませんでした。そしてレース2は、アピワット選手を見据え、表彰台に狙いを定めグリッドにつきました。スタートから5・6番手に上がるところまではよかったのですが、そこから思うような走りができず、ポジションキープになりました。これは自分の力不足だし、振り返ると悔しさしかありません。チャンピオンを逃したばかりか、思い通りの走りもできなかったので... ただ、悔しいだけで終わらないよう、チャンピオンになるためには何が必要かをもう一度考え、この経験を強さに変えて次に備えます。1年間、応援ありがとうございました」
#64 Keminth Kubo(12位/16位)
「インドで大きな手応えをつかむことができていましたが、転倒もあり、その影響で少し精神的に不安があったし、レース1に向けてマシンをうまく仕上げることができませんでした。その状況でもプッシュしたのですが、最後まで難しいレースとなりました。レース2はエンジンの不調から異なるものに載せ替えたのですが、チェックも十分ではない中でうまく走れませんでした。もちろん全力を尽くしましたが、順位を落としては上げ、上げては落としという状態でした。シーズンを通してみると、結果が良かったのはインドのみでしたが、開幕と比べるとまるで別人になったと感じています。フィジカル、メンタル、スキル、考え方すべてが変わりました。ただ転倒が多かったのは大きな反省点です。来シーズンも機会を得られれば今年以上の成績、できれば表彰台に立てるライダーになりたいです」
Koji Kawabe MS戦略部 MS企画グループリーダー
「レース1の伊藤選手は、後半に追い上げ上位陣が見えていたところでトラブルが出てしまいリタイアと、残念な結果に終わりました。切り替えが難しい状況でしたが、レース2はライダー、チームともに諦めることなく全力で臨んでくれました。ただ、力及ばず9位とチャンピオンには届きませんでした。この1年を振り返ると成績が示す通り波があったのは事実です。その中でも第5戦で優勝して盛り返しましたが、勝てる力を持っていることは証明してくれました。我々としても全精力をかけてチャンピオンへ準備を進めてきた訳ですので、ライダーだけでなくチームとして力が及ばなかったのだと思います。
一方のクボ選手は、インドでの快走があっただけに、最終戦では上位フィニッシュを期待していました。トラブルがあったことも影響し、集大成と言える成績でシーズンを締めくくることができませんでしたが、本人の言葉にもあるように、成長を遂げてくれたと感じています。ただやはり転倒が多かったことは事実です。まだ経験も浅いため仕方のない部分もありますが、この経験を無駄にすることなくさらなる成長につなげてほしいと思います。
最後になりますが、スポンサー、サプライヤー、ファンの皆さま、1年間、多くのご支援ありがとうございました。来シーズンもチャレンジは続きます。次こそはチャンピオンを獲りますのでご期待ください」
Yamaha Thailand Racing Team
#22 Apiwat Wongthananon(優勝/優勝)
「レース1の結果は、自分にとってもサプライズでした。今回はこのレースに参戦できるだけでとてもうれしく思っていたのでレース1で優勝できた喜びはひとしおです。もちろん参戦にあっては一つでも高い順位、表彰台を目標にしていました。なぜなら、チーム力、そしてマシンの性能ともに高いことがわかっていたからです。それにこの1年、CEV参戦を通して、セットアップの知識と、レース戦略を立てる術を蓄えてきたことの成果だと思います。もちろんレースは簡単ではありませんでした。最終コーナーで勝負をかけるべく全力でプッシュし続けた結果が勝利につながったと思います。レース2は、ウォームアップでさらにセッティングの完成度が上がり、自信を持って臨みました。このため走っている時も集中できたし、すべての条件が整ったことでラップタイムも上がり、独走できたのだと思います。今回は2レースだけでしたが学びもあったので、これを今後のレースに活かしていきたいと思います」
Theerapong Opaskornkul, Senior General Manager of Sales & Marketing Support
「ライダーもマシンもパーフェクト! まずアピワットは、昨年からさらに強くなりましたね。ヤマハとVR46 Riders AcademyのMaster Campに参加し、今年からVR Master Camp Teamのライダーとして、苦労をしながら学び成長したのです。特に、セッティング能力が上がり、よりクレバーな走りができるようになりました。レース2は独走でしたが、レース1のラストラップの走りがそれを象徴しています。戦略を立てそれを冷静に実行する力は際立っていました。彼はまだ若く、今後もさらに成長を遂げることでしょう。本当にこれからが楽しみなライダーです。一方、シーズン全体を見ると、チームとしては十分な成績を残したとは言えません。来シーズンは新型R6を開幕から投入することになるだろうし、ポテンシャルのあるライダーを抜擢して、次こそはチャンピオンを狙います!」
AP250
Yamaha Thailand Racing Team
#500 Anupab Sarmoon(2位/2位)
「当初はライバルとしっかり戦うことができなかったのは事実です。しかしシーズンが進み、少しずつですが確実にライバルと戦うことができる状態になりました。それは、チームがマシンを改善をしてくれたおかげであり、自分自身も、先輩の指導などでスキルアップしたからだと思います。レース1は、チームが精一杯やってくれたし、僕自身も持てる力をすべて発揮しました。でも足りないところがありました。それは、最終ラップの組み立てです。最後にトップに立っているためにどう走るべきかが練り上げられていませんでした。レース2で、最終ラップの最終コーナー、小山選手とのブレーキング対決になりました。リベンジの機会を得たのですが、前に出ながらも立ち上がりでアウトに膨らみ、ほんの少しですがスピードを落とさねばならない状況になって逆転を許しました。やはりまだ足りないということです。来シーズンもAP250を走る予定なので、この悔しさは来年必ず晴らします」
Theerapong Opaskornkul, Senior General Manager of Sales & Marketing Support
「ほんの少しの差で、両レースともに優勝を逃してしまいました。それでも彼の諦めずにチャレンジする走りを、私も、チームも誇りに思います。きっと、このサーキットにきてくれたファンの皆さまも同じような印象を持ってもらえたのではないでしょうか。今シーズンはライバルのマシンが大きく進化しました。その中で当初は苦戦していたのですが、後半に入り勝負できるようになったのは、車重のレギュレーション変更もありましたが、このレースで、ベテランで実力者の小山選手と勝負できたように、ライダーの力が上がったからだと思います。来シーズンもしっかりと準備し、チャンピオンを獲得したいと思います」