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YARTが鈴鹿8耐に向けて順調にテストを終了

7月5〜6日(水・木)、鈴鹿8時間耐久ロードレースの決勝に向けた合同テストが開催された。欧州に拠点とする「Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(以下YART)」も本番に向け、3日(月)から来日して、テストに臨んだ。

今シーズンのYARTは、昨年と同様、ニッコロ・カネパ、カレル・ハニカ、マービン・フリッツの3人が、YZF-R1で参戦。開幕戦の第46回ル・マン24時間耐久レースで2位表彰台と、幸先のよいスタートを切ると、第2戦スパ24時間耐久レースでは、スタートでの遅れ、セーフティーカーの介入、タイヤのパンクなど、幾多の困難を乗り越えて優勝。YARTにとっては2020年のエストリル12時間以来、24時間耐久レースでは2009年のル・マン以来となる優勝を獲得した。

テストでは、各有力チームが参戦。昨年の鈴鹿8耐でファクトリーを相手にトップ3を争い、世界耐久選手権(以下EWC)のランキングリーダーとして、ライバルやメディアの注目を浴びながら鈴鹿サーキットに登場。初日は、曇りから雨の予報ということで、Bグループに入ったYARTは午前中のドライコンディションを利用して、それぞれ1年ぶりの鈴鹿に慣れるところからスタートした。

また欧州とタイヤの仕様が異なることから、鈴鹿仕様のタイヤの確認とセレクト。欧州のサーキットに比べて路面がハイグリップであることから、昨年のデータを参考にしながら電子制御の改善やポジション調整などの最適化にフォーカスしてラップを重ねた。この結果、2台が走ったYARTは2'07.788、2'08.084とA・Bグループの総合4・5番手。総合トップのTeam HRC から約1.5秒差につけた。

続くセッション2は雨が降りはじめ徐々にフルウエットへとコンディションが変わっていったが、路面が十分にウエットになったところで出走し、ウエットでの電子制御やグリップフィーリングの確認など、貴重なデータを収集することとなった。続くセッション3もウエットとなったことから走行はわずかにとどめ、セッション4(ナイトセッション)はリスク回避も含めてキャンセルし、初日を終えた。

2日目は好天に恵まれて気温も上がり、暑い鈴鹿8耐を想定したテストを実施することとなった。75分というセッション5では、各ライダーがタイヤなど異なる仕様の車両に乗り変えながら、5-10ラップ程度のショートスティントを繰り返してフィーリングをチェック。その中で徐々にラップタイムもアップ、序盤の2分8秒台から、最終的には2'06.813に入れて、このテストでのチームベストを更新している。

最後のセッションは、ロングランを予定して出走したものの、序盤に何度もレッドフラッグが提示され走行が中断される事態となり、予定通りのテストは行えなかったが、トップに1.8秒差の2'07.892(6番手)と、トップに約2秒差の2'08.044(8番手)とした。アベレージとしては2分8秒台を数多く刻んでおり、十分な手応えとともに、テストを終えることとなった。

ヤマハ社員を中心とするロードレースクラブIRF(磐田レーシングファミリー)は、昨年と同様、スマートフォン向けアプリゲーム「アズールレーン」のコラボチーム、#41 IRF with AZURLANEとして出場。ライダーは昨年、初参戦した川名拳豊選手が継続。これにベテランで鈴鹿8耐への参戦経験を持っている澤村元章選手と、若手で初参戦となる遠藤晃慶選手がライダーとして参加する。

IRFは、新しい3名のライダーとなったことからも、最適セッティングをターゲットとした試行錯誤を行いながら、さらに新仕様のサスペンションを投入するなど、新旧のフィーリング変化の確認と新仕様でのセッティングなど、幅広い項目でのテストを実施した。

初日は、ウエットは回避してドライで走れたセッション1と2に集中して取り組み、2日目は高い気温下となったことから、本番を想定したロングランなども含めてセッション5・6に出走して周回を重ね、マシンだけでなくライダーそれぞれの鈴鹿8耐への適合も行うことができた。

YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team

カレル・ハニカ選手談

「今回は、各セッションで5〜10周のショートスティントを行い、いろんなタイヤと制御についての理解を深めることができました。さらにウエットでスムーズに走ることを練習できたし、ウエットでのグリップが¬いいことも確認できました。たくさんの情報を集めることができましたが、ウィークでやるべきことも残っています。燃費やタイヤが消耗を迎えるポイントへなどです。もっとたくさん走ることができればそれも確認できたのですが、初日がウエットとなったことでできませんでした。そのため、ウィークの前の事前テストで確認する必要があると思います。その他の課題としては、フロントのフィーリング。また鈴鹿は欧州のサーキットに比べてとてもグリップがあるため、逆にバイクやタイヤの100%のポテンシャルを引きだすことができていないので、サスセッティングなどの必要性を感じています。それでもかなりの完成度にあることは間違いありません」

ニッコロ・カネパ選手談

「よかったのは、初日に乗った時から昨年のレースペースで走ることができたことです。ライダーのフィーリングも、バイクのベースセッティングも良いということだと思います。でも、昨年は自分たちよりもライバルの方が速かったので、それに近づき、上回るためには小さい部分をいくつか改善したいと思っています。しかし、それがとても難しいのです。また大きな課題としてはフロントの安定性です。1時間のスティントを安定して走るには、フロントからもっといいフィードバックが欲しいと思っています。ただ、テスト終了後にはフロントだけでなく、ライダー全員ですべての項目について分析しました。1周でコンマ1秒遅れたとしたら8時間ではとても大きな遅れになります。勝つためには、すべてが大切だからです」

マービン・フリッツ選手談

「今シーズンの2戦でYARTはとても速かったのですが、ここも、初日の最初のセッションから、速いペースで走ることができました。ただ、レースに向けて準備していく中で、初日は半分が雨で今日も赤旗が多く、ロングランができず試したいことができなかったのはとても残念です。でもうまくいかない時こそ学ぶことも多いし、レースまでに苦労することで本番はうまくいくものなので、今回もきっとそうなると思っています。これから3週間は自宅で過ごしながら準備して100%の状態で戻ってきます。そして、自分たちのチームは強く、チームメイトが速いことも知っているので、レースに向けては大きな自信を持っています」

マンディ・カインツ

「今回の二日間で、日本の暑いコンディションに合わせて、改めて細かくセッティングを行いました。特に想定外のことはなく、マービンに幾度かスリップがあったくらい。激しい雨も降りましたが、耐久チームなので雪が降っても問題がないように準備をしており、全体的にプラン通りで行うことができました。予選の想定したわけではありませんが、いいタイムが出たことはよい兆候。でも正直、あまり決勝には関係はないことと受け止めています。またテストを通じ、ファクトリーチームがいるこの鈴鹿8耐でも、これまでと変わらない立場にいることを確認できました。確実にトップ5には入っていると思います。ウィークはいつも通り、決勝に向けて準備をしていくだけですが、今回もYARTとヤマハがうまくリレーションできていますし、レースに向けた準備はほぼ整っているといってよいでしょう」

#41 IRF with AZURLANE

川名拳豊選手

「今年は私が2年連続での参戦ということでマシンのセットアップを担っています。そこで1・2号車ともに、自分の意見をまずは反映させて、それにチームメイトに乗ってもらって感想をもらいながら互いの妥協点を探していく作業が中心となりました。テストではその妥協点が見つかったことが大きな収穫です。サスペンションに関して、今回KYBと一緒に作り込みを行っていますが、新作を投入し既存のものとの差異を確認するとともに、そのよさを引き出しいてく作業も行いました。昨年は初の鈴鹿8耐で戦い方をイメージできていませんでしたが、今年はそれができているため余裕がありますし、2日目に暑いコンディションを走ったことで、タイヤチョイスも進んでおり、安心材料が揃っています。個人的にもユーズドタイヤで2分16秒台なので、フレッシュタイヤから走り始めればよいアベレージで走れそうだし、ここまで順調です」

遠藤晃慶選手

「初の鈴鹿8耐ということで、今回は経験を積むことが目的でした。特にタイヤメーカーテストから、ほとんどバイクにも乗れていないため、身体の調整からはじめて、2日目に入ってようやく身体が動くようになってきました。その中で本番を想定し、川名選手や澤村選手のセッティングに合わせて走ることを意識しました。幸い、車両の姿勢が川名選手と好みが近いためバイクには馴染めているのですが、タイムとしては2分16秒台に入ってきたところでまだまだです。また、消耗したタイヤではなかなかタイムを出せないところがあるので、そうした部分を少しでも改善できるように心がけて走りました。初めての出場で不安を解消できているわけではありませんが、経験のあるチームメイトに助けられながら、本番に向けて準備を進めていきます」

澤村元章選手

「川名選手、遠藤選手と自分のセッティングの方向性が異なる状況です。具体的には車体の姿勢ですが、私がそれに歩み寄りながら他の部分で妥協点を探っていきました。チームメイトからも、大きな違和感がないというコメントもあるので、よいところまで来ていると思います。タイム的には初日は15秒台にも入ってきており、アベレージも16秒台前半。2日目は気温も上がりサスも変わっているので、今まさにアジャストしているところ。特にサスペンションについては、新しいものを入れたばかりなので、まだよさを引き出していくことができると思います。経験があるとはいえ、私にとっても久々の8耐なのでチームメイトと目線を合わせてやっていますが、着実に前進できているのは間違いないので、これからも助け合い、歩み寄りながら、決勝を迎えたいと思います」

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