ヤマハ発動機が、オイルを液体パーツと捉え、エンジン開発者がエンジンとともにそのパーツの一つとして設計したのが、ヤマハ純正オイルYAMALUBE。すべてのヤマハ製エンジンの信頼性を保証しつつ、エンジン本来のパフォーマンスを発揮させる純正の液体パーツだ。
RS4GP(アールエス フォー ジーピー)は、YAMALUBEブランドの中で最高品質・最高性能を備え、ストリートからエンジンに高負荷がかかるサーキット走行やレースでの使用も想定した二輪車用4ストロークエンジンオイルのフラッグシップ。二輪車オイルに必要な潤滑性、冷却性、清浄性、耐久性を高次元で実現する総合力が魅力だが、ただの優等生ではない。世界最高峰のロードレース「MotoGP」に参戦するヤマハ・ファクトリー・チームが求めた性能を形にしたオイル技術を生かし、高次元のバランスをキープしたまま、まさにパワーを注ぎ込むかのようにエンジンが力を宿す「More Power」を実現したオイルである。
RS4GPは、このMotoGPで活躍するYZR-M1に使われているオイルの技術を活かし、信頼性とパワーを両立するYAMALUBE最高峰のエンジンオイルをコンセプトに開発を進めてきたが、そもそもMotoGPの現場が求める最も重要なオイル性能とはなんなのか?
ヤマハ・ファクトリー・チームのエンジニアは迷うことなく「信頼性」と語る。なぜなら一定の距離を走り終えるまで計算通りの性能を維持できなければ勝利を手にすることはできないからだ。しかしこれは基本性能であり、MotoGPではさらなる上乗せが必要になる。つまり欲しかったのは「More Power」であり、信頼性とパワーの両立が必要だったのだ。
こうして2015シーズンに照準を合わせ、徹底的なロス馬力低減を方針に開発をスタートした。YZR-M1のエンジンは冷却性が格段に高い乾式クラッチであるため、摩擦と粘度の低減に注力。ギリギリとなる低粘度のベースオイルを使い、特別な粘度指数向上剤(VM)で低温〜高温域まで最適な粘度を維持し、添加剤で徹底的に摩擦を低減している。この結果、これまでに比べてロス馬力を5%低減することに成功。
そして2015年、待望のニューオイルを採用したYZR-M1で、J・ロレンソとV・ロッシの2人がチャンピオン、ランキング2位を分け合うリザルトを獲得したが、その後もエンジンの進化・仕様変更に合わせてチューニングを加えながら進化しており、ヤマハ・ファクトリー・チームの活躍を支え続けている。
RS4GPでも「More Power」がテーマであったが、YZR-M1の乾式クラッチとは異なり、湿式クラッチに適した摩擦特性が必要となるため、パワーアップには粘度により抵抗を減らさねばならなかった。ところがYAMALUBEは10W-40を主軸とし、ほかにも信頼性を確保する厳しい基準があるため、それらをクリアしながら、できる限り抵抗が少ない最適な粘度を、温度変化に対応して安定的にキープしなければならないという高い壁があったのだ。
そのブレークスルーの原動力となったのが、MotoGPの現場で開発したベースオイルや粘度指数向上剤(VM)。RS4GPは、半世紀以上に渡り蓄積したヤマハ独自の技術とノウハウと、このMotoGPオイルのテクノロジーを融合することで、理想的なベースオイル、添加剤の選定・配合を実現し、徹底したロス馬力低減により「More Power」を獲得。2015年春(日本)に発売し、ストリートを中心にプロダクションレースや耐久レースなど幅広いシーンで使用されている。