LEGENDARY MACHINES
これまでに、鈴鹿8耐を彩ったヤマハのマシンを紹介します。
ヤマハが鈴鹿8耐で初優勝を飾ったマシン。前年型のYZF750を細部まで見直し、EXUP(可変排気バルブ)や片持ちリアアームを採用し進化させた。ケビン・マギー(豪)と組み出場する予定だった平忠彦は、前週のフランスGPで負傷して、この日は監督として参戦。代わりに西ドイツのマーチン・ウイマーが駆った。中盤まで2番手につけていた#21のYZF750は、88周目のピットイン時にパッド交換に手間取り5位に後退。マギーの強烈な突っ込み重視のコーナリングはパッド消耗を早め、予想以上にパッドが膨らんでキャリパーから外れなかったのだ。しかし以後はライバルの脱落もあり、挽回し120周を過ぎた頃にはトップのヨシムラスズキチームと同一周回数に持ち込んだ。
夕陽が傾く頃、マギーは4回目の走行に入る。ピットでは、この日乗れていたマギーを続投する案が出た。ただし競技規則では1人の選手が8時間の3分の2以上を走れない。そこでピットでは、マギーが最後の給油後も続けて走った場合の合計時間と、ウイマーの走行時間合計の比較を計算、そして決断した。
179周目、4回目の走行を終えたマギーは最後の給油にピットインするが、交代せずに続投。トップを追っていく。残り45分。既にライダー交代を終えたトップとの差は約20秒。トップとの周回ラップの差はマギーのほうが0.5秒ほど速かったが、そのペースで詰めたとしても10秒足らなかった。ピットレーンでは、実際のタイム差より少ないタイム差を示して望みを託すと、残り5分のところで、周回遅れを避けきれずトップが転倒。その横をマギーが通りすぎ、土壇場の逆転で優勝を飾った。Yamahaマシンが8耐を制覇した瞬間だった。