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世界耐久選手権

ヤマハの参戦ライダー、マシンなど世界耐久選手権に関する情報をお届けします。

Rd.03 7月21日 日本

RACE DATA

■開催日:2024年7月21日
■大会名称:世界耐久選手権 第3戦鈴鹿8時間耐久レース
■開催地:日本/鈴鹿サーキット(5.821km)

REPORT

YARTが2位、2004年の参戦以来、鈴鹿で初の表彰台を獲得、EWC最速チームに

2012年、2013年以来となるポールポジションを獲得した#1 YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team (YART)。しかし、過去のポールポジションは、鈴鹿8耐でチームに特別加入した中須賀克行が記録したもので、マシンがEWC Formula仕様に統一された2008年以降でEWCライダーがポールポジションを獲得するのは鈴鹿8耐初のビッグニュースとなった。

なお、TOP10トライアルでポールポジションタイム2分05秒130を記録したのはマービン・フリッツ選手で、公式予選で最速タイムを記録して最終出走者となったカレル・ハニカ選手のタイムが期待されたが、NIPPOコーナーで激しく転倒してノータイムに終わった。

決勝レースのスタートライダーを務めたのはニッコロ・カネパ選手。チームのエースで、速さと的確な状況判断でレースを組み立てることができるライダーだ。そして恒例のル・マン式スタートでは好スタートを切り、#37マイケル・レイターバーガー選手(BMW)に次ぐ2番手で1コーナーに進入。そして最終シケインではレイターバーガー選手を抜きトップに立ってオープニングラップを終える。

カネパ選手は5周目までトップを走るが、6周目に#2水野涼選手(ドゥカティ)に先行を許してしまう。しかし、8周目の最終シケインでトップの座を奪い返すなど、レース序盤は#30高橋巧選手(ホンダ)を加えた数名で首位攻防が繰り広げられた。

その後、徐々に#30 Team HRC with Japan Post(ホンダ)がペースを上げ、さらにピットインのタイミングで首位を独走し始める。そしてYARTはカネパ選手からマービン・フリッツ選手、そしてカレル・ハニカ選手へとYZF-R1を引き継ぎながら単独2位の座を確立していった。

レースが約半分を終えた頃、Team HRC with Japan Postと、YARTが同一周回数でトップを争い、3番手以下はラップ遅れとなっていた。そしてレース終盤、YARTはトップの#30ホンダとのタイム差を約48秒にまで詰めると、#30ホンダが最後のピットインの際にピット作業のルール違反により40秒積算のペナルティが科せられた。この裁定が下されたのがチェッカーまで残り約5分の19時25分で、この時YARTとトップ#30ホンダとの差はペナルティの40秒を引いて約11秒差となっていた。

レースも大詰め、218周を過ぎた段階でYARTはトップから10秒5遅れの2番手。219周を終えての差は8秒9。そして220周の鈴鹿8耐の最多ラップを記録しチェッカーを受けた時、YARTとトップの差は7秒860と、最終的な結果は2位となった。

2004年から鈴鹿8耐に参戦しているYARTにとって今回が初の表彰台となり、この結果YARTはEWCのポイントランキングで首位に浮上し、最終戦ボルドールでの24時間耐久レースでは2年連続、3回目のチャンピオンに挑むことになった。

#15 IRF with AZURLANE は、2022年にスマートフォン向けアプリゲーム「アズールレーン」とコラボレーションをスタート。以来ノントラブルでの完走がなかったことから、第一の目標を「ノントラブル完走」とし、さらに2012年のIWATA RACING FAMILYが記録した202周という、現レイアウトでのチーム最多ラップを上回ることを目標に、2回目の出場となる遠藤晃慶選手、初出場の高居京平選手、そして6回目の出場となった宮腰武選手がライダーとしてチャレンジした。

予選は37番手、ファーストライダーは高居選手が務めたが、スタート直後は40番手まで順位を下げたものの、徐々にポジションを回復。10周目には34番手、15周目には31番手へと挽回していった。

その後は、2分17秒をアベレージタイムに定めていたが、高居選手に続く遠藤選手、宮腰選手もこのタイムを忠実にキープ。83周目に29番手とすると、146周目に28番手、166周目は27番手とし、最終的には27位でゴール。まさに有限実行となるノントラブル完走とともに、周回数も206周を記録し、チームとして過去最多と、目標を達成した。

なお、SSTクラスではTaira Promote Racing(柴田義将選手、阿部恵斗選手、西村硝選手)が211周を走り3位表彰台を獲得している。

RESULT

TEAM RANKING

COMMENT

YAMALUBE YART YAMAHA EWC Official Team 決勝:2位(220周)

ニッコロ・カネパ選手談

「このレースの唯一のミスは、最初のスティントで最適なタイヤを選べなかったことです。スタートは良かったのですが、すぐにフィーリングが良くないことに気がつきました。そこで作戦を変更し、まずはライバルの前に出て、彼らを逃がさないようにしました。できるだけ抑えたけど後半は難しかったです。
2・3回目のスティントは安定したペースで走ることができました。僕らは後方との差をうまくキープしていましたが、恐らくHRCも僕らとの差をキープしようとしていたので、差が変わらなかったのだと思います。それでも表彰台に立つことができてよかったです。チームとチームメイトに感謝です。ピットワークが素晴らしく、後方のチーム考えなくていいぐらい楽にしてくれました。
今年は、ル・マンこそ3位でしたが一番速かったし、スパも圧倒的に強く、鈴鹿もEWCチームではトップになりました。ボルドールのストレートは大変ですが、今年は僕らがこのEWCで最も強いチームだと思うし、チームの雰囲気は素晴らしく、連覇したいと思います」

マービン・フリッツ選手談

「暑さと湿度、最も大変な8耐でした。スティントの最後は集中力が持ちませんでした。頭がクラクラになるレベルでした。でも、ピットストップも速かったしミスもなく、最後まで諦めなかったチームを誇りに思います。自分もとても安定していて、あるスティントではほとんどのラップで、トップとの差が"40秒"と出ていたくらい。それがとても嬉しいことでした。もちろん40秒の差を縮めようと、プッシュしていましたけどね。
最後の2時間はもう2位を確実に取ろうと思っていました。そこでペナルティが出て、カレルにプッシュするように伝えましたが手遅れでした。それでもチームが最大限を尽くして鈴鹿のホームチームと最後まで戦い、最終的に7.8秒差まで追い詰めたのはすごいことです。勝てなかったのは残念だけど2位は素晴らしく、夢の表彰台に立てたし、一番大事なポイントを取れてよかったです。これで6点リードしているから、ボルドールには自信を持って連覇を目指します」

カレル・ハニカ選手談

「キャリアの中で最も大変なレースでした。こういうコンディションでしたからね。メンタル的にも早くボックスに戻りたいと考えてしまうぐらいでした。でも、チームは本当に素晴らしい仕事をしてくれていたので、チームをがっかりさせたくなかったから最大限でプッシュしました。でも最初のステイントはうまくいかず、2回目はよくなりました。そして最後はとにかく無事に終えることに集中していましたが、ライバルのペナルティを知ったのは、残り3ラップぐらいで、勝利のためにプッシュしましたが、もう手遅れでした。
2022年から表彰台を目指してきましたが、今年、ついに辿り着くことができました。鈴鹿の表彰台は格別。世界一のファンがいるからだと思います。本当に楽しかったですね。来年、もう一度味わいたいですね。そしてEWCのライバルよりもポイントを取ることができ、目標を達成できました。だけど差は数点しかないので、最後のレースは激しいバトルになると思いますが、連覇のトロフィーを皆さんに届けられるよう100%で挑みます」

マンディ・カインツ監督談

「完璧なレースを行うこと。他チームを意識しないこと。それができたレースです。最初のスティントはカネパらしいものでした。完璧なスタートで、レースをリードしましたが、フロントタイヤの選択ミスがあり、スティント終盤に後退してしまいました。また、ここまで暑い状況を経験していなかったこともあり、それまでは簡単に7秒台に入っていましたが、このレースでは8〜10秒台になっていました。ハードで大変なレースでトラブルなしでフィニッシュできたこと自体がすごいことです。
ライバルに40秒のペナルティが出た時はほとんど時間が残っておらず、リスクを承知でプッシュするか、2位を狙うか迷ってプッシュすることを選びましたが、カレルにうまく伝わらず、手遅れでした。
ここ数年は表彰台を獲得できる力があったけどミスもあり届きませんでした。でもようやく今回、私たちの実力に相応しい結果になりました。また今回は、レギュラーメンバーで表彰台を取れたことは素晴らしいことで、ライダーとスタッフ、ヤマハやブリヂストンのおかげです。
最終戦は6ポイント差で迎えます。もうすべてをかけるだけです。正直、ボルドールは苦手なサーキットだけど、昨年はそんなに悪くなかったのでアタックモードで挑みます」

IRF with AZURLANE 決勝:27位(206周)

遠藤晃慶選手談

「高居さんが主導で準備をしっかり進めていてくれたので、安心して走ることができ、結果に結びつけることができました。8耐初参戦だった昨年は、3スティント走ることが未知の世界でしたが、走ってしまえばなんとかなるという経験値がありましたし、楽観的な性格もあって、今年も走り始めれば大丈夫だろうと思っていました。ところが今年は去年よりも暑いし路面温度も高く、身体にもタイヤにも影響があって想像以上に大変でした。とはいえ、何事もなければ目標を達成できることは分かっていたので、今はもう次の目標をどうするかが気になっている所です。年々、参戦チームのアベレージタイムが上がっているので、ライダーが高い次元で走れるようにならなければならないのですが、1年でどこまでタイムアップできるのか・・・ とはいえ、まずは応援してくださったみなさんに良い報告ができて何よりです」

高居京平選手談

「初めての8耐でスタートライダーを務めました。サイティングラップでは思いのほか燃料節約のため、みんなペースを抑えて走行するし、なんなら観客のみなさんに手を振り8耐の雰囲気をかみしめながら回ってくる感じだったので、"これが8耐か!"と思いながら緊張するよりお祭りに参加する感覚で楽しめました。初めてのルマン式スタートも問題なかったのですが、実はそんなお祭り気分も手伝って、スタートの勢いに乗せられて前半プッシュしすぎてしまい、路面温度の高さもあって後半タイヤが持たずペースを落とさざるを得なかったのです。耐久レースの心得がない、経験の浅さが出てしまいました。2スティント目は、1スティントでの経験を活かしタイヤに負担をかけない走行を心がけ、路面温度が下がってきたこともあって最後までしっかりタイヤを維持して走り切れました。しかし途中で腰の具合が怪しくなり、元々腰痛持ちだったこともあって、3スティント目は痛み止めを飲んで臨んだものの、これまで経験したことがないほど痛みが増して車両を抑えられなくなり、チームが設定したアベレージタイムを維持できなくなってしまったのです。耐久に耐えられる身体作りができればスプリントレースでも効果があるはず。それを今後の課題とし、8耐での経験を日頃のレースに活用するとともに、機会があればまた8 耐に挑戦したいですね。まだまだ伸びしろしかありませんから」

宮腰武選手談

「走行を終えて満身創痍の状態です(笑)。今回、2スティント走れば良かったので気持ちに余裕を持って臨めました。とはいえ、やはり2本目はハードでした。できるだけタイムロスしないようにと、がむしゃらに走ってやりきった感があります。
レース中の自己ベストタイムが2分16秒2で、他の2人が15秒台に入れていたことから、"よし、自分も!"という思いが頭をよぎりましたが、今回の自分の役割はそうではないと、チームの設定タイム2分17秒台で安定して走ろうと思い直しました。
過去には転倒してしまったり、規定周回数に満たない年もあり、6回目となる今年が、これまでで一番良い8耐となりました。チームとしての目標を達成するとともに、個人的に目標として掲げていた"過去最高の達成感"も成し遂げることができました。3人ともにタイムが出せるマシンづくりができていたことが要因ではないでしょうか。
8耐に向け、寝不足を重ねながらの準備は本当に大変なので、ライダーの席はやる気のある若手に譲ろうと思うものの、誰がライダーを務めるのか、チーム内バトルを楽しみながら、今後の目標を考えたいですね」

宇田久人監督談

「ライダーが決勝走行中に腰を痛めてしまうという、8耐本番ならではの不測の事態もありましたが、"ノートラブルで、周回平均2分17秒台で走行しチームの最高周回数202周を更新する"という目標を達成することができました。正直、すごいです。こんなに上手くいったことがないので、なんとコメントしたらいいのか言葉が見つからないほど。この暑さにあわせてセッティングを詰めるなど、ライダー3人がとにかくがんばってくれましたし、それを支えるチームのみんなが、それぞれの仕事をやりきってくれた結果、目標達成に結びついたと思います。ライダー3人については、それこそ去年の8耐が終わった頃から1年掛けて、今年の8耐を見据えノントラブル完走に向けて入念な準備をしてきました。またメカニックや給油メンバーは入れ替わりがありましたが、やるべきことを明確にし情報共有しながら引き継ぎを行い、今まで積み重ねてきた個人の経験値をチームとしてカタチにし、ピットワークできるよう仕上げてくれたことが大きいですね。今やりきれることをやりきった結果、目標をクリアできたので、この先、何にチャレンジするか、これから夢を膨らませていきたいですね。ご期待ください。応援くださったみなさん、ありがとうございました」

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