世界耐久選手権
ヤマハの参戦ライダー、マシンなど世界耐久選手権に関する情報をお届けします。
Rd.04 9月16-17日 フランス
RACE DATA
■開催日:2023年9月14-17日
■大会名称:世界耐久選手権 第4戦ボルドール24時間耐久レース
■開催地:フランス/ポール・リカール・サーキット(5.673km)
REPORT
Yamalube YART Yamaha EWC Official Team 、2023世界耐久選手権チャンピオン決定
Yamalube YART Yamaha EWC Official Teamが見事なファイティング・スピリットを発揮し、シーズン最終戦のボルドール24時間耐久レースで4位を獲得してシリーズ・チャンピオンに輝いた。
同チームのK・ハニカ、N・カネパ、M・フリッツ、そしてリザーブ・ライダーのR・ムルハウザーは、ランキングトップのチームを14ポイント差で追う状況で最終戦を迎えていた。
シーズン開幕戦のル・マンで2位、第2戦24H SPA EWC Motosでは、チャンピオンを獲得した2009シーズン以来、チーム初となる24時間耐久レースの優勝を果たした。
この時点でポイントフィードを大きく広げていたが、続く鈴鹿8時間耐久レースではテクニカル・トラブルにより最初の2時間で最後尾まで後退。その後は決意と粘り強さで反撃し、総合22位、クラス18位でゴールして貴重な2ポイントを獲得したものの、タイトル争いのチャンスを逃してしまったかに見えた。
ボルドールに到着した時点で、チャンピオン獲得のためには初日から全力で攻めなければならないことをチームの誰もが理解していた。テストおよびフリープラクティスで順調なペースを見せ、予選ではグリッド4番手を確保した。
決勝を前に、先日、発表されたばかりのYamaha R1 GYTR Pro Limited Edition のカラー・スキームをベースとしたR1誕生25周年を記念するスペシャル・カラーを披露。そのあとスタート数時間前から激しい嵐がコースを襲い、路面は濡れた状態から乾き始める難しいコンディションとなった。
タイトル争いを展開する他の5チームと同様にリスクを避けてインターミディエートのタイヤを選択するか、あるいはリスクをかけてスリックタイヤ装着を決断するか。第1スティントを走るカネパと経験豊富なチームはスリックを選択して順調に走行し、この戦略が間違っていなかったことを証明した。
濡れた路面でスリックを走らせるという最初の数ラップのリスクをしっかりコントロールしたあとは、15分も経たないうちにフルドライとなり全力走行。ライバルたちがタイヤ交換のためにピットインする間にアドバンテージを広げ、スティント終了までに1ラップをリードした。しかしセーフティ・カーの出動により失われ、もう一度、初めからハードワークをやり直すこととなってしまった。
そのあとは上位3チームの熱戦へと変化。コース上では互いにコンスタントにバトルを展開し、ピットストップのたびに順位を入れ替えながら周回を重ねていく。この激しい首位争いに、数万のフランスのファンが声援を送り、熱狂的で素晴らしい雰囲気を作り出していた。
カネパの後に続いたフリッツとハニカも好調ペースを維持し、8時間経過時点で2位につけて9ポイントを獲得。これによりランキングトップとの差を1ポイントまで短縮した。
夜になってもYARTはプッシュを続けて順調にハイペースをキープ。12時間が経過するころにはチャンピオンシップのおもなライバルたちがリタイアし、実質的にはYARTとSERTとの一騎打ちとなっていた。
SERTに対してはポイント上、十分なアドバンテージがあったため、YARTはエネルギー温存の作戦。とくにエンジンに負担がかかる1.8キロのミストラル・ストレートではペースを抑え、完走を妨げるリスクを遠ざけた。この戦略が功を奏して残り8時間までは安定して2位をキープ。しかしカネパがピットインしてきた時点でオーバーヒートの兆候が見られたため、マシンをピット奥へ入れてラジエターに水を補充。フリッツに交代してスティントを終えたあと、もう一度マシンを入れ、再度、冷却システムの水を補充し、5分間を費やして原因究明を図った。
これによりライバルから5ラップ遅れとなったが、3位には3分のアドバンテージ。SERTが優勝しても、YARTは9位以内に入ればチャンピオン獲得が決定する状況だ。そのためチームとしては万全を期し、ピットストップのたびに、しっかりマシンをチェックし、深刻な問題に発展しないよう修理を加えながら走行を続けることとした。
それでも時間が経過するごとにトップとの差が拡大し、プレシャーが増大し始める。またも残酷な不運に見舞われてチャンスを逃してしまうようなことはないだろうか? そんな疑心暗鬼を打ち消すように、チームが問題を解決。ウォーターポンプの問題であることが判明したため交換し、4位を維持して残り2時間に突入した。
このまま無事に走り切りさえすれば、チームとして2度目のタイトル獲得が実現する。この状況に3人のライダーはみな、鋼の神経を発揮し、ひとつのミスもなく完走を果たした。緊張の24時間を戦い抜き、705周を走り切って4位でゴールラインを通過。優勝したSERTに12ラップの遅れをとったが、5位に5ラップ差をつけた。
チーム全体が強い決意を維持し続け、度重なる困難を乗り越えて、チームとして2度目となるEWCタチャンピオンに輝いた。合計181ポイントを獲得し、ランキング2位に20ポイント差をつけて価値あるタイトルを手にした。
またスーパーストック・クラスではTeam 18 Sapeurs Pompiers CMS Motostoreが総合8位と健闘し、クラス・ランキング3位を獲得。Maco Racing Teamも9位で続いている。
Moto Ain Yamaha EWC Supported Teamは前半の遅れを取り戻して16位、KM Motoは6位争いを展開するも、終盤でテクニカル・トラブルに見舞われて17位。その一方でWojcik Racing Teamはわずか2ラップでリタイアした。
RESULT
TEAM RANKING
COMMENT
Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(4位)
K・ハニカ選手談
「世界耐久選手権のチャンピオンになり、素晴らしいフィーリングです。2020年に私をYARTに導いてくれたマンディに心から感謝しています。彼のほかにもブリヂストンをはじめとする、私をチームの一員にしてくれた全ヤマハ・ファミリーに感謝の気持ちでいっぱいです。また冬のテストのたびに、マシン改良を目指してハードワークに取り組んだ素晴らしいチームメイトにも本当に感謝しています。彼らは常に、すべてのスティントで100%の力を出し切っていました。過去2年間はチャンピオンの可能性が十分にありながら、結果的に逃すこととなってしまいました。そして今年ついに、そのときがやって来たのです。この素晴らしいチームの一員でいられることを最上の喜びに感じています。レースは本当に厳しいものでした。SERTとはいいバトルができましたが、彼らはミストラル・ストレートで本当に強かったので、しばらくは2位キープに集中していました。そのうちにオーバーヒートが発生してしまったのです。でもチームがトラブルを解決してくれて、ゴールまでたどり着くことができたことを誇りに思います」
N・カネパ選手談
「素晴らしい気分です。私たちが一緒にレースをするようになってからずっと、世界チャンピオンを目標にしてきました。ですからレースのたびに、スティントのたびに、ヘルメットを被ってマシンに跨ればすぐに、頭のなかではそのことばかり考えていました。この夢の達成のために、いつも限界までプッシュしてきたのです。良いポジションをキープしているときも、耐久レースではコーナーの先に何が待っているかわからないので、その場所で安定することよりも常にプッシュし続け、常にベストポジションを維持して勝利を目指してきました。こうした姿勢が、今回の素晴らしいメダル獲得につながったのだと思います。レースはハードでした。序盤は順調でしたが、セーフティ・カーにアドバンテージを奪われてしまいました。そのあとはまた毎ラップで懸命に戦い続けました。オーバーヒートに見舞われたときは、かなり心配しましたが、チームが見事な仕事で解決してくれました。チームのみんなの努力に感謝します。私たちは世界耐久選手権のチャンピオンになりました。本当に素晴らしい気分です」
M・フリッツ選手談
「何をかけた戦いなのかがわかっていたので、シーズン中、最もタフなレースだと感じました。世界チャンピオンになるという夢がついにかなったのです。今回も何度も困難にぶつかりました。スタートではスリックタイヤで行く決断をして、ニッコロが素晴らしい走りをしてくれましたが、そのリードをセーフティ・カーに奪われてしまいました。また残り7時間でオーバーヒートが発生したときはとても長く感じましたが、チームの見事な判断で解決し、最後の2時間半は、また完璧な状態に戻りました。私を、そして私たち全員を信じてくれたマンディに感謝しています。チームメンバーのひとりひとりが、このタイトル獲得に貢献しました。みんなが1年中、非常にハードな仕事を続けてきたのです。これ以上に素晴らしいチームメイトは想像することができません。また、これまでに非常に近いところまで行きながらたどり着けなかったこの場所に立てたことは特別の感慨です」
R・ムルハウザー選手談
「なんというクレイジーなレースでしょう! チームの一員になって2年経ちましたが、これまでもあと一歩と迫りながらバッドラックに見舞われてきました。今年はついに、すべての惑星が一直線に並ぶように条件が整い、世界チャンピオンになることができました。とは言え、選手たちにとっては非常にタフなレースで、スタートで1ラップのリードを築いたあと、そのすべてを失ってしまったときには、今年もまただめなのかと思わざるを得ませんでした。しかしチームの態度は見事なもので、決してあきらめませんでした。チームメイトたちは本当に素晴らしかったと思います。私は決勝を走ることはありませんでしたが、チームは大きなファミリーのような感じで、マシンのセットアップやパーツテストなどを通じて彼らを助けることができてとてもうれしいです。YARTチームとヤマハ・ファミリーの一員になることができて最高の気分です。この瞬間をエンジョイします」
M・マンデイ(チーム・マネジャー)談
「なんて言ったらいいでしょうか! とにかく非常に特別な気分です。これまでに何度もチャンピオンを手にするとことまで行きましたが、そのたびに何かが起こり辿り着けませんでした。最終戦の最後の1時間でタイトルを逃してしまったこともあったのです。しかし今日はついに、長年の目標を達成することができ感慨無量です。
私たちのマシンはライバル車より遅く、厳しい戦いになりました。エンジンへの負担が大きいコースなので、トライし続けながらも、最後までエンジンをもたせるために慎重さを維持しなければなりませんでした。このことでストレートでは他のマシンに比べて時速30キロも遅くなり、毎ラップ、コンマ6秒〜7秒も遅れてしまいましたが、私たちは完走するためにこの方法をとったのです。24時間レースのシミュレーション・テストなどできるはずがないので、とくにボルドールではレースそのものがテストです。
ライダーたちが本当によくやってくれました。今シーズンは毎回、レースをリードしました。ル・マンではオイルに乗っての転倒がありましたが、スパ・フランコルシャンでは、いくつか問題がありながらも完璧なレースをしました。また鈴鹿でも非常に素晴らしいペースを見せてくれたのですが、ほんの小さなトラブルにより夢の表彰台を逃してしまいました。この大会ではとくに、彼らを誇りに思いました。リタイアしそうなところでしたが、彼らは決して諦めず、最後尾から22位まで挽回。しかもトラブル後に1ラップ半も取り返したのですから。
私にとっては彼らこそが実在のヒーローであり、真の耐久レースライダーです。常にファイティング・スピリットを持ち続け、勇敢で決意にあふれ、ついに今回はその努力を実らせたのです。このタイトルは私たちにとって、さまざまな意味を持ちます。チーム全員が大変な仕事を続けてきたので、今はこの幸せな気持ちを享受し、そのあとで、来年のタイトル防衛法について考え始めようと思っています」