世界耐久選手権
ヤマハの参戦ライダー、マシンなど世界耐久選手権に関する情報をお届けします。
Rd.02 4月21-22日 フランス
RACE DATA
■開催日:2018年4月21-22日
■大会名称:世界耐久選手権 ル・マン24時間耐久レース
■開催地:フランス/ブガッティ・サーキット
REPORT
GMT94 Yamahaが劇的チャージでランキング2位
世界耐久選手権の第2戦、第41回24Heures Motosは劇的な展開となった。GMT94 Yamaha Official EWC Teamが2度の転倒と2度のピットストップを乗り越えてトップ10フィニッシュを果たした一方、ポールシッターのYART Yamaha Official EWC TeamはM・フリッツが153ラップ目にトップに立ったあと転倒を喫してリタイアとなった。
決勝に先立ち行われた予選ではYART速さを見せた。B・パークス、M・フリッツ、そして木曜日に体調を崩し、24時間のレースは体力・精神的に厳しいと判断し欠場となった藤田拓也に変わって参戦したM・ノイキルヒナーがポールポジションを獲得。GMT94のD・チェカ、N・カネパ、M・ディ・メリオが4番手を獲得した。
ウォームアップではYARTがGMT94に0.014秒差でトップを維持し、この時点で早くも激しい戦いを暗示。そしてYARTはパークスが、GMT94はチェカが第1走者としてスタートを切り、ともにトップ10内につけて上位をうかがう展開となった。1回目の走行でチェカは2番手に上げてカネパに交代。パークスも3番手でフリッツにバトンを手渡した。まもなくカネパは、レースリーダーのミスを突いてトップに浮上。フリッツが後方から果敢に追撃するも動じることなく、安定したラップタイムとハイペースをキープしながら順調に周回を重ねていった。そして2台のバトルが33ラップ続いたあと、ともにピットイン。それぞれディ・メリオとノイキルヒナーに交代して第3走者の走行が始まった。
時間の経過とともに気温も上昇するなかでは、ライダーたちが体力と精神力をすり減らすだけでなく、長時間にわたりハイパフォーマンスと耐久性を要求されるマシンも激しく消耗する。ライダー、チーム、テクニカルパートナーに同様のチャレンジを強いるとされるこのレースのなかで、153ラップ目、YARTのフリッツが高速の右コーナーで転倒し、マシンから投げ出されてグラベルに滑り込んだ。これでセーフティカーが入り、安全確保のためにペースコントロールが行われた。
損傷の激しいYZF-R1を修復するため、YARTのメカニックたちはゼロから組み直して次の走者、ノイキルヒナーに託した。しかしこの間にもチームマネジャーのM・カインツは、改めてレースを続行することのリスクと効果とを天秤にかけていた。そしてボルドールで行われたEWC初戦での不運も振り返りながら、ここまでのタイムロスと修復したマシンで過酷なコンディションを走る危険性を鑑みてリタイアを決断するに至っている。このときのセーフティカーによってGMT94のカネパは40秒強のロスを強いられたが、すぐに取り戻し、夜が訪れる前に1ラップ以上のリードを築いた。
YARTが戦列を離れたあとはGMT94が、暗闇で視界が狭くなるなかで慎重にレースラインをたどりながら戦い続けていった。チームメイトの3人は難しい状況にも冷静さを失わず、8時間経過時点でトップをキープしたことで10ポイントを加算。しかも2番手のチームがピットに入る間に、リードを2ラップまで拡大した。辺りを暗闇が包み多くのライダーがペースを下げる一方で、GMT94の好調は続く。チェカ、カネパ、ディ・メリオはいずれもスピードを維持しており、ディ・メリオはナイトセッションでファステストラップを記録したほど。出場全60チームのほとんどがスローダウンしたりリタイアしたりするなかで、GMT94は時間を追うごとに速さを増してゆき、16時間経過時点でまた10ポイントを加算した。
計算通りに17.5時間で620ラップを走り終えた同チームは、すでに2番手との間に5ラップのアドバンテージを築いていた。ここまでくれば2戦連続の勝利が十分に見えてくる。それ以上のプッシュやリスクを求められることもなく、ディ・メリオは夜明けとともに、耐久レースのなかで最も習熟したライダーのひとり、チェカと交代した。ところがその後、チームに衝撃の知らせがもたらされる。2003年にGMT94に加入後、16年間にわたって出場し続けてきたチェカがトップ走行中に転倒。マシンは大きく損傷し、押して戻ることも不可能という状況。耐久レースにおいては、ライダー自らが助けを借りずにマシンをピットまで戻さなければならないという規則がある。24時間以上も眠らず疲れ切ったライダーが、レザースーツに多くの擦り傷を作り、YZF-R1の壊れたパーツを引きずって、1km以上もマシンを押していた。レースへの情熱を見せつけたチェカに賞賛が贈られ、ようやくピットにたどり着くと、ファンだけでなくライバルもスタンディングオベーションで迎えた。
29分間をかけてマシンは修復され、トップから18ラップ遅れの11番手でカネパがコースに復帰。すぐさま挽回を開始し、コース上の誰よりも速いペースで周回を重ねた。10番手でバトンを受け取ったディ・メリオも同様にペースを上げていったが、9番手に上がったあと転倒。ピットに戻り、7分間をかけて修復後、再びディ・メリオが22ラップ遅れの11番手から挽回を図ることとなった。 その直後、700ラップを走り終えて残りは3時間。2連覇の夢は届かないものとなったが、チームは士気を高く保ったまま最後までプッシュを続けた。そしてついには10番手に上げてチェッカーを受けて11ポイントを獲得。8時間目と16時間目の20ポイントと合わせて31ポイントを加算した。FIM EWCディフェンディングチャンピオンのGMT94 Yamaha Official EWC Teamは、新たなリーダーにわずか4ポイント差のランキング2位でシリーズ第3戦に臨む。
一方、シーズン初ポイントを目指していたYART Yamaha Official EWC Teamも同様に、5月12日、8 hours of Slovakia Ringに照準を合わせている。
RESULT
TEAM RANKING
COMMENT
GMT94Yamaha Official EWC Team
N・カネパ選手談
「18時間まで5ラップをリードしたあと、このような結果になるとは想像していませんでした。でもこれが耐久レースというもので、私たちはそこで戦っているのです。ときにアンフェアでもあり、たとえ3年間プッシュし続け、ほとんどのレースで優勝し、タイトルを獲得してきたとしても、ある日、それまでとはまったく違うことが起きるのです。後悔は何もありません。私たちは素晴らしいチームで、今日も全員が最高の仕事をやり遂げました。栄光のチームでありますが、今日のような不運と遭遇することもあるということです。チャンピオンシップの行方は依然としてオープンですから、私たちは最終レースの最終ラップまで戦い続けるだけ。GMT94Teamのすべての人に感謝します。すべてのピットストップでトップをキープし、2台のマシンを修復。ダビデ・チェカ、マイク・ディ・メリオというふたりの素晴らしいチームメイトに恵まれ、このチームの一員でいられることを誇りに思います。次はもっと強くなって戻って来ます!」
C・ギュヨット、チーム・マネジャー談
「レースはいつも同じというわけにはいきません。私たちは、今日の手痛い運命を受け止めなければなりません。ダビデ・チェカはいつも、ともに決定した走行計画を尊重しており、後悔はありません。夜の間中、ハイペースを維持して5ラップのリードを築いていましたが、アドバンテージは10分間に過ぎません。そして10分間は決して十分なリードとは言えないのです。転倒後、マシンを押してきた彼には本当に驚かされました。なぜならフロント部分が邪魔をしていて動かすのがとても難しかったからです。そんな状態で、いったいどうやって戻って来たのか私たちは想像できません。そのあとはメカニックたちがタンク、燃料レール、ハンドルバー、ラジエター、排気管、ダッシュボード、ブレーキ、フットペダルとマシンのすべてを直しました。それも30分足らずで。チャンピオンシップのリードを失うこととなりましたが、レースには満足しています。次回、スロバキアが楽しみです」
YART Yamaha Official EWC Team
M・カインズ、チーム・マネジャー談
「ウイークを通じて何も不安はありませんでした。常にトップをキープできていたので、ここでノーポイントに終わったことは本当に残念です。良かったところもたくさんありました。予選で最速タイムを記録してポールポジションを獲得。プラクティス・セッションも好調でしたし、ライダーたちは皆とてもよく乗れていましたが、ただマービンの転倒だけがアンラッキーでした。マシンはダメージがひどく、修復に1時間かかって大きく遅れてしまいました。そこでライダーたちの消耗を防ぐためにリタイアを決意したのです。これから次のスロバキア・リンクに向けて準備を始めます。ランキングトップに返り咲くためベストを尽くします」