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全日本トライアル選手権

ヤマハの参戦ライダー、マシンなど IAスーパーに関する情報をお届けします。

Rd.08 11月2日 City Trial Japan

RACE DATA

全日本トライアル選手権 第8戦City Trial Japan大会
■開催日:2025年11月2日
■開催地:大阪府大阪市中央公会堂前中之島通り・特設会場
■観客動員数:7,000人
■気温:20度
■天候:晴れのち曇り
■競技:予選・準決勝・決勝方式
■最多クリーン数:氏川政哉(ヤマハ)/5

REPORT

電動トライアルバイク「TY-E 3.0」と黒山が今季4勝目、IAスーパー史上初となる電動車でのチャンピオンを獲得
氏川は「TY-E 3.0」でランキング2位

国内最高峰の国際A級スーパー(IAS)クラスによる全日本トライアル選手権シリーズ(全8戦)はついに最終戦となり、前回第7戦までのポイントランキング上位10名による競技、第8戦 City Trial Japan 2025 大会が11月2日、今年も昨年と同じ大阪市にある中央公会堂の前、中之島通り特設会場で開催された。

市役所をはじめ中央公会堂や美術館のすぐ目の前で、人工セクションを使って行われる"シティトライアル"は、今年で7回目を迎えた"市街地競技大会"。2022年から全日本格式となり、例年はこの最終戦でシリーズの表彰もされるところだが。今年は1週間前に開催された第7戦のリザルトが確定しておらず、シリーズの順位も確定していないため、その表彰は行われない(シリーズの順位は後日、MFJの公式サイトで発表される)こととなった(下記のリザルトは暫定結果)。

ヤマハ発動機株式会社は、電動トライアルバイク「TY-E」での全日本参戦を通じ、電動技術の獲得とカーボンニュートラルへの取り組みを進めてきた。今シーズンは最新の「TY-E 3.0」を2台、熟成を重ねた「TY-E 2.2」を1台、合計3台の電動トライアルバイクをライダーたちに託して参戦し、この最終戦も同様の体制で臨んだ。

YAMAHA FACTORY RACING TEAMから参戦する#2黒山健一は、第7戦までのポイントランキングトップに立ち、同ランキング2位に立つチームメイトの#3氏川政哉に13ポイント差をつけていた。このため、黒山は今大会で4位以内に入れば、チャンピオンが決定となる。一方、氏川が勝って、黒山が5位以下となれば、氏川が王者となる。また、ランキング3位の#4小川毅士(ベータ)と、ランキング4位で、電動トライアルバイク「TY-E 2.2」を駆る#8野崎史高(Team NOZAKI YAMALUBE YAMAHA)によるランキング3位争いも注目された。

今大会はIASクラスの年間上位10名だけが出場することができるが、#1小川友幸(ホンダ)は怪我のため欠場し、9名出走となった。アシスタントは今回も、黒山は甥の黒山陸一(りくと)。氏川は田中裕人、野崎は関口康太が務めた。

好天に恵まれた決勝は、11時から予選ラウンドが行われた。会場には、木材やコンクリート、丸太や鉄材などを使った人工セクションが4つ用意され、第1、第2、第3、第4セクションと順にトライしていく。この4セクションで予選が争われ、9名の内上位6名が準決勝ラウンドに進むことができる。準決勝はやはり第1、第2、第3、第4の4セクションに挑むが、一部手直しされ、予選よりも難易度を上げて行われ、この準決勝で上位3名が決勝ラウンドに進出できるというシステムだ。決勝では、準決勝で走った4セクションを4つとも逆走する形で、第5、第6、第7、第8セクションとしている。

予選の結果は、タイトル争いのトップに立つ黒山をもってしても明暗が分かれ、第1セクションは鮮やかにクリーン(減点0で走破)したが、第2セクションは惜しくも失敗(減点5)。第3はクリーンするが、第4は再び減点5となり、トータル減点10。ライバルたちも同様に苦戦し、結果は黒山と#9久岡孝二(ホンダ)、野崎がともに減点10。さらに氏川と小川(毅)、#7武田呼人(ホンダ)の3名がともに減点11。わずか1点差の間に6名がひしめく大接戦となり、クリーンの数や通過ポイント、トライタイムなどで差がつく形となった。ともあれ、黒山と野崎は危なげなく準決勝に駒を進めた。氏川は上位勢がクリーンしている第1での減点5が惜しまれたが、他者が全員減点5となった第2はなんと足着き1回のみの減点1で走破、勢いに乗れば怖い存在であることを印象付けた。

13時30分から始まった準決勝は、氏川が第1で減点5とつまずいたものの、その後はなんと3連続クリーンを叩き出し、一躍トップに浮上。黒山は逆に第1から第3まで3連続クリーンして、第4もクリーンかと思われたが、残念ながら減点5。こうして氏川と黒山がともに減点5。この2人に、第7戦で優勝した小川(毅)が減点7で続いた。タイトル争いについては、黒山の3位以内が確定的となったため、準決勝終了時点で黒山のチャンピオンが決定的なものとなった。野崎は減点12で4位となり、決勝進出できる3位以内に入ることは叶わなかった。

こうして迎えた決勝戦。最終集計は、準決勝と決勝の減点を合計して出されるが、黒山と氏川はともに準決勝は減点5のため、やはり決勝をより少ない減点でこなした者が勝者となる。決勝の第5、第6、第7セクションで黒山は、なかなかクリーンが出ないまま、減点8を加算。対する氏川は、クリーン、減点5、クリーンと減点5に抑えることに成功した。最終セクションを残し、黒山と氏川の差は3点で、第8セクションは極めて難易度が高い設定で、ここで逆転するには、かなり思い切ったチャレンジが必要となった。

先に走った黒山は、高い塔の上に上がったところで、なんと遠く離れた別の塔の上まで大ジャンプして飛ぶ移るという離れ業に挑戦。見るもの皆が固唾を飲んで見守る中、黒山は着地時に1回足を着いたものの見事に大技を決めて見せた。黒山はトータル減点9で、減点8の氏川を迎え撃つ。今度は氏川にとって、大きなミスは許されない、非常にプレッシャーのかかる状況となった。ところがなんと、黒山のいかにもトライアルらしいアタックに触発されたのか、氏川もまた大ジャンプを決行。土壇場にきて、両者の素晴らしい激突が大観衆を熱狂させた。氏川の結果は惜しくも減点5となったが、勇気あふれるチャレンジに惜しみない拍手が送られた。トータル減点10となった氏川を、黒山は1点差で大逆転。エンターテイメント要素の強い"シティトライアル"を、最高のレースで最高潮に盛り上げた黒山と氏川だった。

そして、黒山はついにYAMAHAとともに2012年以来13年ぶりとなるチャンピオンを奪還、自身は通算12度目のタイトルを獲得。この最終戦での優勝は今季4勝目となり、通算97勝目。そしてまた、国際A級スーパークラスでは史上初となる、電動バイクで王者に輝いた。チャンピオンTシャツをまとった黒山は、やむことのない拍手に包まれ、TY-E 3.3の開発陣とチームの仲間たちによって秋空に高々と胴上げされたのだった。

なお、「TY-E 3.0」と「TY-E 2.2」は今シーズン、3名のライダーにより6度の優勝を果たしており、3年間にわたる電動トライアルバイクでの国内最高峰クラスでのチャンピオン獲得という目標を達成し、ヤマハ発動機にとって創立・レース活動70周年の記念イヤーに華を添えた。

RESULT

RIDERS RANKING

COMMENT

YAMAHA FACTORY RACING TEAM

黒山健一選手(優勝)

「初めてチャンピオンを取るわけではないし、昨日・今日トライアルを始めたわけでもないので、プレッシャーはそんなにないかなと思っていましたが、第5戦で3位になってからは、ずいぶんとプレッシャーがかかりました。次の第6戦では勝ちましたが、勝ったら勝ったで違うプレッシャーが出てきました。13年ぶりにチャンピオンになりましたが、レースに出るというプレッシャーと、勝つというプレッシャーと、チャンピオンを取るプレッシャーの3つがあるのだなと実感しました。
僕的には、ここからヤマハの電気バイク伝説が始まるのではないかと勝手に思っています。年齢的には僕が海外に行くことはないですけど、ホンダを含めて他社メーカーの電気バイクは海外で戦っていますから、氏川選手がまだ若いのでぜひとも海外でこいつを戦わせてあげてほしいなって思います」

氏川政哉選手(2位)

「最後のセクションは、自分も飛ぼうと思っていたんですけど、飛べ飛べっていう声があったので、それで観客の皆さんが沸いたらいいなと思って飛びました。でも失敗してしまいました。あの時までは勝っていたんですけど、あの5点で逆転されました。このような失敗は二度とないように頑張ります。今年も最終戦でシティがありましたが、皆さんにトライアルのことをもっとよくわかってもらえるし、皆さんにトライアルを楽しんでもらえたと思っています。来年もぜひシティを開催してもらい、たくさんのお客さんに来て欲しいなと思います。もちろん、他の全日本トライアルにも皆さん来てください。よろしくお願いします」

Team NOZAKI YAMALUBE YAMAHA

野崎史高選手(4位)

「昨年は怪我をしてしまって、ランキング8位に終わってしまったんですけど。今年はランキング4位になり、4つも順位が上がったので良かったと思います。でも本来目指すところは1番なので、満足はしていませんが、怪我からの復帰シーズンとしては悪くなかったと思います。TY-Eに関しても結構当初の方から開発の方に加わらせていただいて、ライダーと開発メンバーの皆さんで育て上げたマシンなので、これからもまだまだこのマシンで優勝なり、チャンピオンなりを取り続けて、もっと皆さんにこの電気の車両の良さっていうのを知っていただけたらと思います。まだまだこれで終わりとは思っていないので、皆さんの応援の力が僕らの活動にもつながると思いますので、引き続きまた来年も応援よろしくお願いします」

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