世界耐久選手権
ヤマハの参戦ライダー、マシンなど世界耐久選手権に関する情報をお届けします。
Rd.04 9月20日 フランス
RACE DATA
■開催日:2025年9月20-21日
■大会名称:世界耐久選手権 第4戦ボルドール24時間耐久レース
■開催地:フランス/ポール・リカール・サーキット(5.673km)
REPORT
YARTが世界耐久選手権でチャンピオン獲得
Yamalube YART Yamaha EWC Official TeamのM・フリッツ選手、K・ハニカ選手、J・オハロラン選手がシーズン最終戦のボールドール24時間耐久レースで2位を獲得し、2025年FIM世界耐久選手権のチャンピオンに輝いた。レースは三つ巴の戦いとなり、終盤の劇的な展開を経てYARTはわずか1ポイント差でチャンピオンを手にした。またヤマハは2年連続でコンストラクターズ・タイトルを獲得した。
YARTはBMW Motorrad World Endurance Team (BMW)に1ポイントをリードし、ランキング・トップで最終戦を迎えた。予選3位で3ポイントを加算したが、2位のBMWチームに4ポイントが与えられたため、両チームは同ポイントに並んで決勝をスタートすることとなった。
フリッツ選手が好スタートを切り、順調なリズムで4番手をキープ。交代したハニカ選手は前を走るBMWとの差を縮めて3位争いに持ち込んだ。第3スティントを務めたオハロラン選手も懸命にプッシュを続け、チームはスタートから2時間後に3位に浮上、そのままアドバンテージを40秒まで拡大した。
しかし周回が進むにつれて後続が徐々に追い上げてくる。フリッツ選手とハニカ選手が何度も好バトルを繰り広げて応戦するも、7時間終了時点でBMWチームとの差はわずか0.5秒差まで縮まってしまう。またトップをキープするYoshimura SERT Motulチームもタイトル争いに絡み始め、ますます緊迫感が高まった。
YARTはフェアリングの緩みを修正するため1分以上を費やして4位に後退したが、決してあきらめることはなかった。夜間走行では、ペースで勝るハニカ選手とフリッツ選手が繰り返し交代しながら着実に周回を重ねていった。チームメイトのオハロラン選手は火曜日のプライベート・プラクティスで初めてこのコースを走行したばかりだった。
8時間終了時点で3位に上がり8ポイントを加算。しかし2位のBMWに1ポイントの遅れをとった。16時間経過後も同様の結果となり、タイトル争いはいよいよ三つ巴の接近戦へと発展していく。このままSERTが優勝しても、YARTはBMWを抑えて2位でゴールすればチャンピオンが決定する状況だった。
YARTの3名は胃に激しい痛みを抱えながらも持ち前の"ネバー・ギブ・アップ"の精神で懸命にプッシュを続ける。日曜日の夜明けを迎える頃にはハニカ選手の体調が悪化したため、オハロラン選手とフリッツ選手が交代でその後の3時間を走行した。
刻々と時間が経過するなかで順位に変化はなく、YARTの3位、チャンピオンシップ・ランキング2位の様相がますます濃くなってくる。ところがその後、雨雲が太陽にとって代わり、ポールリカール・サーキットの状況が一変する。
ドラマは最終盤に待っていた。残りわずか30分でBMWにアクシデントが発生し、YARTが2位に浮上、チャンピオンシップのトップに立った。この時点でSERTとの差はわずか1ポイントだったが、そのまま着実に走り切ればチャンピオンが決定する。ハニカ選手は2ラップ遅れで最後の20分間をオハロラン選手に託した。
オハロラン選手がコースに出た直後に雨が降り始めてプレッシャーがのしかかる。一つのミスがタイトルの行方を左右することになるからだ。チーム全員が最後の数秒を数えながらピットから見守るなか、オハロラン選手は2位でチェッカーを受け、725ラップを走り切った。これによりYARTは、2009年、2023年に続きチーム3度目となるEWCのタイトルを史上最少マージンで獲得した。
同時にフリッツ選手は1週間前の結婚を喜び、ハニカ選手はEWC2度目のチャンピオンとなり、オハロラン選手はYARTでのデビューイヤーに初タイトルを獲得した。またヤマハは世界耐久選手権のコンストラクターズ部門の連覇を果たした。
RESULT
TEAM RANKING
COMMENT
Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(2位)
M・フリッツ選手
「今の気持ちを言葉にすることはできません。2023年に続き2度目のタイトルを獲得して素晴らしいウエディング・プレゼントになりました! ル・マンの優勝とスパでの表彰台のあと、いつもチャンピオンを夢見てきました。しかし鈴鹿ではリタイアしてしまい、20ポイントのアドバンテージの可能性を失ってしまいました。代わりにわずか1ポイントだけリードしてこのレースに臨みました。しかしチームが素晴らしい仕事をしてくれました。全員が100%の力を出し切ったのです。チームメイトをはじめチームのひとりひとりを誇りに思います。ヤマハ、ブリヂストン、そしてトロフィー獲得を支えてくれたすべての人に感謝しています」
K・ハニカ選手
「正直なところ、この喜びをまだ心からエンジョイできていません。まだ疲れてしまっているのです。夜の間に胃に激しい痛みがあり、今回は人生で最も苦しいレースでした。懸命に走り続けていましたが、どうしてもできなくなってしまったため、朝になってマービン(フリッツ)とジェイソン(オハロラン)が3時間以上を走行し、その間に休めたことがとても幸運でした。体調が回復し、終盤でまた走ることができました。チームの努力の素晴らしさを物語る出来事で、彼ら全員を誇りに思います。ライダーだけでなくマシンもチームも大幅な進化を証明し、将来に向けて励みにもなりました。2度目のタイトルは本当に素晴らしいものですが、これで終わりにはしたくありません。3度目、4度目を目指し、決して止まることはありません。ヤマハ、ブリヂストン、そしてもちろん、チームのひとりひとりに感謝します」
J・オハロラン選手
「素晴らしい1年を過ごすことができました。ル・マンで優勝し、スパでは私の転倒でリードを失ったあと表彰台まで挽回しました。鈴鹿では問題を抱えてリタイアし、その結果のすべてが今回ここに集約されていたのです。ポールリカールを走るのは初めてでした。火曜日のプライベート・プラクティスで初めて走ったので、その後のことは予想がつきませんでした。それにもかかわらずサーキットをエンジョイし、24時間のレースを最後まであきらめずに走り切りました。ライバルたちがあのような形で離脱するのは見たくありません。BMWのレースは見事でしたし、彼らもここに立つにふさわしいチームでした。とにかく素晴らしいシーズンでした。チームメイト、ヤマハ、ブリヂストン、YARTに関わる全ての人に感謝します。チームの一員であることを誇りに思います」
M・カインズ(チーム・マネジャー)
「私に何が言えるでしょう...これが耐久レースというものです。私たちは懸命に戦っていましたが、タイトルには手が届きそうもありませんでした。でも最後にそれが実現したのです。素晴らしい結末でした。チームのみんなを誇りに思います。ライバルのペースに届いてはいませんでしたが、決してあきらめませんでした。ライダー全員、そしてメカニックの数人が腹痛に苦しんでいましたが、それでも私たちは戦い続けました。正直なところまだ実感がわいていないのですが私たちは確かに3度目のタイトルを獲得したのです! ヤマハ、ブリヂストン、スポンサーの皆さま、チームメンバーのひとりひとりに感謝の気持ちを伝えたいです。私たちは成し遂げたのです。BMWチームは本当に素晴らしく、このような形でタイトルを逃すべきチームではありません。誰もが多くのバッドラックを経験していますが、なかでも今日のことは特別でした... シーズンを通して長い戦いを続けてきた彼らに、心から祝福を送りたいと思います」