世界耐久選手権
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Rd.02 6月7日 ベルギー
RACE DATA
■開催日:2025年6月7日
■大会名称:世界耐久選手権 第2戦スパ8時間耐久レース
■開催地:ベルギー/スパ・フランコルシャン(6.985 km)
REPORT
YART、第2戦スパ8時間耐久レースで3位獲得
FIM世界耐久選手権(EWC)第2戦スパ8時間耐久ロードレースの決勝が7日、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われ、Yamalube YART Yamaha EWC Official TeamのM・フリッツ選手、K・ハニカ選手、J・オハロラン選手は多くの試練を乗り越え3位を獲得した。チームにとって表彰台は連続6回目、シリーズポイントでは18ポイントをリードしてランキングトップを維持している。
同チームは前日の金曜日に行われた予選で2番手を獲得して4ポイントを加算。土曜日の現地時間12:30から始まった決勝は、スタート時点で路面に水たまりが残る状況ながら徐々に乾いていくなかで展開。途中、雨が激しくなる時間帯もあったが、プラクティス、予選を通じていずれのコンディションでもハイペースを維持してきたYARTは、優勝を目指して自信を持ってラップを重ねた。
フリッツ選手がスタートで出遅れてポジションを落としたものの第1スティントのなかで3番手まで挽回。トップとの差を1.8秒まで縮めてハニカ選手にバトンを渡した。ドライ・コンディションのうちに両ライダーが交代でアタックし、雨の可能性に備えてオハロラン選手を温存する作戦だった。
オハロラン選手とっては初めてのスパ・フランコルシャンであり、木曜日と金曜日は雨に見舞われたためドライでの走行はわずか15ラップ。しかも同選手は「O Show」の異名を持ち、ウエット・コンディションでの強さで知られている。
2度目のライダー交代直前にハニカ選手がトップに立ち、何度も順位を入れ替える激しいバトルを展開。しかしピットストップでやや手間取り、フリッツ選手が約20秒遅れてコースに復帰した。ふたりはここから再びペースを上げてトップとの差を9秒まで短縮。そしてスタートから2時間半ほどたった頃、ついに雨が降り出した。走行を任されたオハロラン選手は実力を発揮し、チームの戦略を裏付ける結果となった。
全長6.985キロと長いコースレイアウトの影響で、ある部分では深い水たまりができ、他の部分は完全なドライという非常に難しいコンディションとなったが、オハロラン選手は見事な走りを披露した。ライバルに対して1秒以上も速いペースで周回し、雨が激しさを増した3時間目についにトップに返り咲き、さらにスティントを2回継続して56秒のアドバンテージを構築した。
スタートから5時間経過時点でチームのアドバンテージは46秒。しかしフリッツ選手が第10コーナーでコースアウトし、マシンを止めようとして小さな転倒を喫した。すぐさま復帰して20秒のリードを確保したが、その後にバッドラックが待っていた。
オハロラン選手がピットストップ完了前にハンドルバーに触れたとして10秒間のストップ&ゴーのペナルティを課されてしまう。これにより48秒間を失ったが、2番手を確保してコースに復帰。雨が強まるなかで奮闘を続け、6時間半経過時点で再びトップを奪取した。ところがオハロラン選手は再び不運に見舞われる。前を走るマシンが転倒し、その影響でオーバーランしたバックマーカー(周回遅れ)に行く手をふさがれてしまった。しかしイエローフラッグが出されており、2度目のペナルティを避けたいオハロラン選手はオーバーテイクを断念してともにスローダウン。レーシングラインに戻る際に激しいハイサイドを起こして転倒してしまった。
衝撃によりハンドルが片方外れた状態で、痛みに耐えながらマシンをピットに戻したオハロラン選手は、幸いにも大きな怪我は免れていた。チームはわずか4分間でマシンを修復し、ハニカ選手が交代して最後の二つのスティントで継続走行に挑む。まさに取りつかれたような必死の走りで3位チームとの40秒差を縮め、残り1時間でオーバーテイクに成功した。
その後も最後までハイペースをキープし、YARTは187ラップを走破して3位でゴール。スパ耐久レースで2023年から3年連続となる表彰台に上った。この結果、チームは今大会で獲得可能な全35ポイント中25ポイントを手中にし、チャンピオンシップのリードを18ポイントに拡大した。
RESULT
TEAM RANKING
COMMENT
Yamalube YART Yamaha EWC Official Team(3位)
M・フリッツ選手談
「本当に勝ちたかったですし、あともう少しだったのですが、あまりにもいろいろなことがあり過ぎました。私の小さな転倒、ジェイソンのビッグクラッシュ、ストップ&ゴーのペナルティ、そしてイエローフラッグが振られていた15~20秒間はオーバーテイクができませんでした。楽な戦いではありませんでした。そうした状況を考えれば、3位をキープし、ミスのなかった他のチームより前でゴールできたことは私たちの速さを証明できる結果です。チームの全員を誇りに思います。カレル(ハニカ)は終始いい走りをしましたが、なかでも最後のウエットは見事でした。ジェイソン(オハロラン)もまた、最悪のコンディションのなかでダブル・スティントに挑み、ラップタイムで長くライバルたちを上回りました。私たちはチャンピオンシップのリードを広げ、6戦連続の表彰台に上りました。そして早くも、次の日本を楽しみにしています!」
K・ハニカ選手談
「天候に翻弄され難しいレースでした。その点については前回のル・マンと似ていますが、R1のフィーリングは前回以上に良くなり、私たちは強さを増していました。ドライ、ミックス、ウエットすべてのコンディションで好調で、十分なリードを築いていました。しかしストップ&ゴーのペナルティや2回のクラッシュなどにより、残念ながらスパ・フランコルシャンでのハットトリックを達成できませんでした。それでも最後に挽回し、6戦連続となる3位表彰台を獲得できたことを本当にうれしく思います。そして全体的には満足しています。もちろん勝利をつかみたかったのですが、貴重なチャンピオンシップ・ポイントを獲得できましたし、チームはウイークを通じて懸命に働き続けました。彼らを心から誇りに思います。次は鈴鹿に焦点を移し、ランキング・トップを確実に維持していけるよう頑張ります」
J・オハロラン選手談
「スパで初めてのレースでしたが、そのすべてをエンジョイしました。コースはファンタスティック、雰囲気は最高でした。チームは良い状態にありましたし、過去2年連続で優勝しており、今回は3度目を狙っていました。天候が変化し続け、非常に難しいコンディションでしたが、ウエットでは順調に力強く走れる自信がありました。この2日間、私はほとんどドライで走れていなかったので、路面が乾いている間はカレルとマービン(フリッツ)がアタックし、雨が降り出したら私に交代するというのがチームの作戦でした。そして私はスティントを2回継続し、2位に1分近い差をつけました。その間もずっとマシンのフィーリングは上々でした。しかしピットストップの混乱のなかで間違ってマシンに触ってしまい、ストップ&ゴーのペナルティを課されました。トップに戻りましたが、バックマーカーを抜こうとしたときにイエローフラッグが出たため、後ろに留まりました。彼らはおそらく私が抜こうとしていると考えたと思いますが、私は規則を守りペースを落として後ろについたのです。そしてレースラインに戻ろうとしたところで激しいハイサイドを起こしてしまいました。ペナルティで遅れたあと懸命に挽回してきたのに、このようなことになってしまいチーム全員にとって非常に残念な結果です。しかし耐久レースとはこういうものなのでしょう。そのあとカレルが見事な追い上げで40秒の差を詰め、3位でゴールしました。まさにチームの力です。次の鈴鹿がとても楽しみです」
M・カインツ、チーム・マネジャー談
「チーム全員が力を結集し、素晴らしいパフォーマンスになりました。あらゆるコンディションでペースが良く、マービンとカレルがドライで先頭を切り、ジェイソンはウエットで実力を披露しました。懸命の走りでリードを築き、マービンの転倒のあともトップを維持していました。そのあと些細なミスでストップ&ゴーのペナルティを受けて40秒以上ロスしてしまいましたが、ジェイソンが取り戻しました。イエローフラッグ提示中に遅いバイクの後ろについてしまったのは彼にとって不運で、誰にでも起こり得る転倒でした。怪我がなかったことが幸いです。そのあとはカレルが見事なダブル・スティントを行い、3位のチームを追い抜きました。私たちは連続6回目となる表彰台に喜び、またチャンピオンシップのリードを拡大できたことに満足しています。私はチームメンバーひとりひとりの努力を誇りに思います。またR1とブリヂストン・タイヤも素晴らしかったです。鈴鹿がとても楽しみです」