渡辺祐介、さらに強くなるための最終戦へ
ヤマハは今シーズン、YZ250FMを走らせIA2クラスを戦う「YAMALUBE RACING TEAM」を新たに設立しました。その目的は、若手育成。ライダーにはIA2クラスで3シーズン目を迎える渡辺祐介選手が起用されました。IAに昇格したばかりの2013年、いきなり3勝を挙げるなど抜群のスピードを備える19歳です。「YAMAHA YSP Racing Team」に参加した2014年はケガによる欠場などが影響してしまい、ランキング15位にとどまりましたが、今シーズンはまさに「YAMALUBE RACING TEAM」の設立目的どおり、持ち前のスピードに強さを加え、常にトップ争いを展開してチャンピオンを目指すための新たなチャレンジを始めました。
渡辺選手は開幕戦九州の第1ヒートで、2位表彰台を獲得する順調なスタートをきります。ところがその後、トップグループに絡めないレースが続くという苦難の時期を迎えました。公式練習や予選、いや決勝中においても常に表彰台を狙えるタイムを叩き出しながら、スタートダッシュから1コーナーまでの接近戦で自分のラインを確保できず、たびたび多重クラッシュに巻き込まれてしまう。後方集団から猛烈なペースでポジションを回復していくものの、冷静さを失い再び転倒してしまう。走りのリズムを完全に見失ってしまうレースもありました。強いライダーになるための課題が、たくさんあがってきたのです。
それらの課題を渡辺選手とともに克服するのが「YAMAHA YSP Racing Team」の任務でした。フィジカル、メンタル、ライディング、レース運び、マシン。シーズンを戦いながらさまざまな要素を検討し、克服するためのメニューをつくり、ひとつひとつ課題をクリアしていくことになりました。
その成果はシーズン後半戦、明確な結果となって現れ始めます。第6戦東北大会では、3位/2位と両ヒートで表彰台を獲得。第7戦SUGOでは、目標にしていたトップ争いを繰り広げ、優勝こそできなかったもののトップに立ち、レースをリードする場面もありました。第9戦関東では2ヒートともスタートで集団に飲み込まれ、後方から追い上げる展開となりましたが、30+1周をフルに使ってポジションを上げていこうという冷静さをスピードに加え、第1ヒートでは2位争いを繰り広げ、3位表彰台を獲得しました。
しかしクリアするべき課題は、まだ残されています。優勝という結果がまだ出ていませんし、第9戦で2015年のチャンピオン獲得を決めた富田俊樹選手(ホンダ)は、常に圧倒的な速さと強さを発揮しました。その富田選手と競り合うためには、スタートからレース序盤でしかるべきポジションにつけておく必要があります。そしてトップに立ち、レースをコントロールする力も必要です。ただ、渡辺選手は今シーズン、強いライダーになるための、最後のステップを踏むところまで近づいているのも事実です。「上位で競り合ったときのマシンコントール、戦略など、自分に足りないところがあるのは分かっています。でも勝負にならないわけではない、とも思えるようになりました」と、渡辺選手。積み重ねてきた努力の成果を、さらに発揮すべく臨む最終戦SUGO。その努力を支えてきた「YAMALUBE RACING TEAM」のスタッフと一丸となり、今シーズン最後のチャレンジに向かいます。