全日本モトクロス選手権IA1 Playback
IA1ルーキー、安原志の懸命なチャレンジ
21歳の安原志選手は今シーズン、新設立されたYAMAHA FACTORY RACING TEAMのライダーに抜擢されました。昨年まで戦っていたのはIA2で、チームは地元の名阪レーシング。安原選手は国内最高峰のIA1に、初年度ながらファクトリーマシンYZ450FMを駆り挑戦することになったのです。
最初に掲げた目標は、各メーカーのファクトリーライダーがひしめく上位グループの争いに加わり、6位以内でチェッカーを受けること。その点、安原選手は順調なスタートをきりました。熊本県で行われた開幕戦九州大会ヒート1、つまりデビューレースで、いきなり5位入賞を果たしたのです。
ところがもちろん、数々の経験を積み重ねてきたライダーが参戦するIA1クラスは、甘くありませんでした。6位以内という目標をクリアするために越えなければならない壁は厚く、9〜11位のリザルトが続きます。安原選手はアタックを続けますが、450ccマシンが発揮する強大なエネルギーを巧みにコントロールし、30分+1周のレースディスタンスをフルに使って結果を残そうとするベテラン勢は、簡単に抜かせてくれないのはもちろん、少しでも隙を見せれば抜いてきます。
さらに、たとえルーキーでもファクトリーチームの一員として結果を残さなければならない安原選手には、大きなプレッシャーがかかっていました。チームメイトとして頼れる先輩、エースの平田優選手が開幕前のテストで負傷、欠場となり、ひとりでYAMAHA FACTORY RACING TEAMを背負わなければならなかったのです。それでも安原選手は、決してあきらめずに奮闘を重ねました。30分+1周を走りきるだけでなく、競り合うために必要な体力づくり。走れば走るほど見えてくるベテラン勢の上手さに立ち向かうための、ライディングスキルの向上。アドバイザーとして来日した元AMAファクトリーライダー、ダグ・デュバック氏のアドバイスにも積極的に耳を傾け、限られた時間でトップライダーたちへ近づく方法を懸命に考え、トライしました。
その努力はシーズン後半戦で実を結び始めます。第6戦東北大会では、6位/7位でゴールして、自己ベストの総合6位を獲得。得意とするマディコンディションになった第7戦SUGOでは、スタート直後の1コーナーでエンジンをストールさせてしまうミスを犯しながらも、圧倒的なスピードを発揮し、1周目のコントロールライン通過時には4番手まで回復。さらに2周目には、2番手へと浮上しました。最終的にはタイトルを争っている大ベテラン、熱田孝高選手(スズキ)にかわされてしまいますが、安原選手はIA1で初の表彰台となる、3位でチェッカーを受けました。そして第9戦近畿大会第1ヒートでは、表彰台こそ叶わなかったものの、4位入賞を果たしています。
安原選手がファクトリーライダーにふさわしい、高いポテンシャルを備えているのは確かなのです。だからこそ、チームは全力を尽くして安原選手を支えてきました。もちろんIA1ルーキーですから、まだまだクリアするべき課題は残っています。スロットルを全開にして立ち上がっていく豪快なライディングが魅力的な一方で、考えすぎてしまうほど繊細なメンタルを持つ安原選手。最終戦の舞台であるスポーツランドSUGOは、「自信を持って戦える場所」だと言います。トライ&エラーを繰り返したIA1での集大成となる、MFJ GPでの活躍にご期待ください。
「ヤマハブルーのフラッグがコースサイドで振られているのが視界に入ると、本当に励みになります」と安原選手。最終戦SUGOでも、みなさんと一緒に戦う安原選手の応援をお願いします!