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2021

来年はもっとやれる。チャレンジあるのみ!

2021.12.27

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まずは、今年1年間、本当にたくさんの応援ありがとうございました。途中、怪我による欠場もあったし、ランキング14位で終わりましたが、学びの一年としてこれまでにないほど充実したシーズンになりました。1年間、たくさんの応援ありがとうございました。

早速ですが、過去の話からスタートします。今年、スーパーバイク世界選手権(WSBK)フル参戦に至るまで、数々のターニングポイントがありました。その中でも大きかったのが2015年、若手育成チーム「YAMALUBE RACING TEAM」に入ったことでした。それはプロライダーとしての一歩であり、プロ意識を持ち、ヤマハの契約ライダーの責任を背負ったことで、自分が大きく変化をはじたタイミングだったからです。

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2014年はJSB1000にステップアップしたものの、実はかなりの苦労がありました。そんな中で抜擢していただき、JSBで2年目、しかもユースチームでどこまでトップに近づけるのかという不安。さらに僕にとっては初の同クラスに参戦するチームメイトに藤田拓哉選手がいたことで、サバイバルの状況がありました。同じ条件で走るチームメイトには全セッションで勝ち続けなければいけない。トップの中須賀克行選手に少しでも近づきたい。ヤマハライダーとして誇れる走りをしたい。自分にとって大きな試練が一気に押し寄せ、強くなるきっかけを与えてくれたのです。

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ファクトリーに入ってからも同じ状況は続きました。2014年、中須賀選手を見て「この人に勝つことはできるのだろうか?」という歴然とした力の差を感じたライダーと同じシートに座り、追いつき、追い越す。常に目の前に目指すものがある環境もまた、WSBKへの扉を開いた重要なポイントでした。

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そして2020年、JSBでチャンピオンを獲り、次を考えた時にWSBKが現実的かつ最大の目標だったので、迷うことなくこの道を選びました。しかし、今だから言えることですが、全日本で培ってきたものを生かし戦えると思っていたものの、タイヤ、コースの違いなどが複合的に絡まって、その経験を十分に生かせない苦労もたくさんありました。一例ですが、全日本では寒い時はソフトタイヤ、暑い時はハードタイヤを使うことがセオリーですが、ピレリはその逆。シーズンではそれがわかっていながらも過去の経験が邪魔して選択が鈍ることもありました。

それでも、過去の経験をアップデートしながら、自分を変えていく作業を続けました。過去のブログでも書きましたが、レザースーツが傷だらけになるほど接触が当たり前の世界、気持ちで負けた時点で勝負になりません。「そこを突いてくる?」という場面を何度も重ねる中で、突かれた時に引かないメンタルを身につけ、逆に自分も突いていくことができるようになったことは成長の一つ。

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スタートから1周目の混戦にも自信がつきました。スタート良し悪しは、0-100キロ到達までのタイムを目安にしていますが、全日本での3秒ジャストからコンマ2-3秒ほど速くなっています。予選の順位が良くないこともありますが、1周目で10台を抜いたこともあり、大きな武器を手に入れました。

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多様なライバルたちに囲まれ、揉まれて、精神的には強くなってきましたが、やはり世界トップライダーたちのライディング技術には衝撃を受けた部分もあります。中でも、ヤマハに2009年以来となるチャンピオンをもたらしたトプラック選手の走りには衝撃を受けました。レース中のブレーキングでジャックナイフをしている姿を見たことがあるかもしれませんが、あの領域でのコントロールは想像を超える難しさがあります。普通に考えればオーバーランするレベルまで突っ込んでいきながらも、バイクを止める技術を完全にマスターしている。レイ選手やレディング選手も同等の速さを持っていますが、あのブレーキは彼独自のスペシャルなセンスによるものです。ブレーキも単に握るだけでなく、そこにもいろんな技術がありますが、彼のデータをみて何をやっているか想像はつくものの、真似しようと思っても簡単にできるものではないのです。

コースにもよりますが、コーナリングスピードだけで言えばトプラック選手と同等かそれ以上で走れています。ただ、それが仇になっていることもまた事実です。速いが故に加速に繋がらず、ラップタイムで大きく負けてしまう。自分がストロングポイントだと思っていたコーナリングスピードがウィークポイントになっていたのです。さらにレース後半から終盤にかけてタイヤ性能に急激な落ち込みもあり、コーナリングを生かすスタイルでは限界が見えてしまったのです。

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コーナリングスピードを重視する走りは自分の中で一つの正解だったので、まさかこれが原因だとは思いませんでした。実際レースでは、自分よりも遅いライダーを抜けないことが多々あり、そこで自分のスタイルを疑い、後半戦に入るナバラ(スペイン)からセッティングを大きく変えました。コーナリング性能は犠牲になりますがフロントを硬くし、奥まで突っ込んでから強いブレーキングで止めて旋回時間を極力短くし、パワースライドを使って向きを変えて立ち上がり加速に繋げていく乗り方です。

ライバルたちは白煙が出るほどスライドさせているので、「これで最後までもつのか?」という疑いもありましたが、結果として彼らはタイヤ性能をキープしているし、自分はスピンさせないようにコントロールしているものの早く消耗しているので、ブレーキングを重視する走りもまたピレリタイヤのセオリーの一つなのだと思います。

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乗り方を変えるというのは、並大抵のことではありません。大袈裟に言えば、右利きを左利きに変えるような感じです。だから当然、変更した当初は以前よりも遅かった。実はプレシーズンテストのカタルニアで、チームメイトのガーロフ選手のセッティングを施して走ったことがあります。その時は、フロントが硬すぎて思うように走れず2-3周で戻ってきました。それほど自分には合っていなかったのです。そして第9戦のカタルニアでは、ガーロフ選手とほぼ同等の仕様で走れるようになり、成長できているなと実感したものです。

しかし結果を見てもわかる通りまだ発展途上。習熟度は6割程度です。それでも開幕当初よりは速く走れている実感はあるのですが、周りも進化を遂げているので思うように追い付けていないのが現状です。だからもっと早く、大きく進化しなければ追い付けないという厳しい現実もあります。さらに3レース制を戦い抜くフィジカルも課題です。9月には3週連続で9レースを戦いましたが、心身ともによりタフでないといけないのです。

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13戦の中で一番印象に残っているのが、先に話した第9戦カタルニアのレース2です。事前テストで2日間走り、相性も良いのですが、順位こそ10位ながらもトップとの差は17秒につけて、「やるべきことができれば戦える!」という感触を掴んだレースでした。最終戦のインドンシアのレース2も印象に残ったレースの一つです。レース1が厳しい結果だったこともあり、レース2は良いところを見せて終わりたいと臨みました。ウエットでしたが目標としていたシングルフィニッシュの7位で終わることができたのは、来年に繋げるという意味でもよかったと思います。

さて、来年は勝負の年になります。コースは一回りして理解しマシンにも慣れたし、イタリアでのトレーニングの環境も整ってきている中で、もう言い訳はできませんが、「もっとやれる」という自信はあります。常に優勝してチャンピオンになることが目標ですが、ライバルの顔ぶれもさらにパワーアップすることが予想され、現実的に考えると常時トップ10に入ることを最低ラインとし、表彰台に立つことが目標になります。

そういった意味では、シーズンオフが重要です。今年はコースを知る、バイクを知ることがメインでしたが、来年はテストでいろんなことを試して、失敗して発見してライディングの質を高めていきたいと思います。チャレンジあるのみです!

全日本の時のようにファンの皆さんにはお会いできる機会がありませんが、必ずや期待を超える走りを見せるので、来年も日本から暖かく見守っていただければと思います。1年間、支えてくださりありがとうございました。よいお年を!

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